本日開幕! 楽しさに特化した“観せる”ストーンズ・テーマ・パーク、「Exhibitionism-ザ・ローリング・ストーンズ展」に行ってきた


ザ・ローリング・ストーンズの50年の歩みを500点ものアイテムから多角的に振りかえる「Exhibitionism-ザ・ローリング・ストーンズ展」が遂に日本上陸した。こうしたメモラビリアやグッズによるロック・アーティストの展覧会についてはデヴィッド・ボウイ展「David Bowie is」で観尽くした感じがしないわけではなかったが、さすがにストーンズだけあって、エンターテイメントに徹した展覧会になっていたところが素晴らしかった。

展覧会はセクションごとにテーマが設定されてあって、最初観客を出迎えるのはさまざまなライブや映像のビジュアルが交錯するように映し出される一角で、ファンなら思わず立ち止まってどれも確認したくなるところ。本当にいろんな時代を潜り抜けてきたバンドなんだなとわかったところで次に待ち構えているのが、「イーディス・グローヴ」というセクション。

これはストーンズがまだストーンズと名乗る前から、ミック・ジャガーキース・リチャーズ、ブライアン・ジョーンズらが共同生活していたロンドンのチェルシーにあった部屋をできる限り正確に再現したもの。つまり、これはメモラビリアでもアイテムでもなんでもないわけだが、しかし、この部屋はミックやキースらのインタビューにあまりにも頻出する伝説の部屋なのだ。


実はこの部屋からブライアンが音楽誌に電話で売り込みを図ったところ、バンド名を訊かれ、床に散乱していたマディ・ウォーターズのアルバムの中の“Rollin’ Stone”からとっさにザ・ローリング・ストーンズと命名したことをかつてキースは語っている。そんな部屋をわざわざ再現してみせるところに、この展覧会のテーマパーク的な楽しさが象徴されているように思った。

マニアックなファンにとって嬉しいのは「スタジオ」と括られたセクションで、ロンドンのオリンピック・スタジオ、パリのパセ=マルコーニ・スタジオ、ロサンゼルスのサンセット・サウンズ、そして、ストーンズ自身が編み出した移動スタジオ、ローリング・ストーンズ・モバイル・スタジオなどに関連したアイテムが陳列され、特に各スタジオのリール・テープの箱がたまらない。数々の名曲のタイトルがそこに書きつけられてあるからだ。


一方、箱に書かれた文字列に喜んで跳び上がるわけではないような、そこまでマニアックではない来場者に対しては、ストーンズの面々がスタジオで使った楽器を眺めながら、メンバーによるスタジオでの体験がヘッドホンでわかりやすく語られるコーナーもあって、実にバランスのとれた構成になっている。

出色なのはギター・コレクション・コーナー。ここではキースとロニー・ウッドのギターやミックのアコースティック・ギターとブルース・ハープが陳列されてあるのだが、もちろん、これもまたそれほど興味がない人にとっては、どれを観ても同じというものでしかないのかもしれない。
そんな人たちに感心をもたらすためか、スタジオというテーマがまだこのエリアでは続いていて、スペースの真ん中にヘッドホンでストーンズの楽曲8曲を聴きながら自分で好きなようにミックスできるブースがあって、これがとても楽しかった。


独特なセンスが発揮されていた70年代のストーンズのツアー・ポスターや80年代までのアルバム・ジャケットなどの成り立ちなどとても面白かったし、映写コーナーでは名称マーティン・スコセッシ監督がストーンズの数々のライブ映画について(自作『シャイン・ア・ライト』も含めて)語っているのも面白い。

衣裳は近年のものがわりと多かったように思うが、ヴィジョンが効果的に衣裳の合間に配されていて、1969年のツアー時のティナ・ターナーの映像などがとても刺激的で、あらゆるところに絶妙なめりはりがほどこされていて、本当によく出来ていると感心した。


たとえば、デヴィッド・ボウイの展覧会は時代とデヴィッド、デヴィッドのアートや表現、その創作の形としてのサウンドとヴィジョンというテーマが重層的に交錯する内容だった。それに対して、このストーンズ展は、「ストーンズ」という50年続いている現象の各部分を切り出して、観客に楽しんでもらうために見せていく内容になっている。今回の展覧会タイトルの「Exhibitionism」ももともとは「露出狂」という意味もあり、この割り切った楽しさがとても成功していると思った。(高見展)

キース・リチャーズがバンド初期につけていた日記
「ツアー・オブ・ジ・アメリカズ’75」のロゴ検討のためのミックやチャーリーの手紙やスケッチ
「禁断のバックステージへ」エリアより



写真=前田侑希撮影
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