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    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    3年ぶりとなるリンゴ・スター アンド・ヒズ・オール・スター・バンドの来日公演で、このオール・スター・バンドの30周年記念ツアーともなるものだが、ある意味で、前回よりもエンターテインメント性が格段に増した内容となっており、「オール・スター・バンド」の看板を見事にみせつける公演で、あらためてすごいなと感服した。

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    中核メンバーは前回と変わらず、リンゴのほかには先月もTOTOとして来日していたスティーヴ・ルカサーと元サンタナ/ジャーニーのグレッグ・ローリーなのだが、今回はベースに元アヴェレージ・ホワイト・バンドのヘイミッシュ・スチュワートと、元メン・アット・ワークのコリン・ヘイが加わっていることで、バンドの回り持ちのレパートリーに圧倒的なほどにメジャー感が加わっている。とにかくヒット曲と名曲がひたすら連発されていくという、おそらくリンゴがイメージしているのであろう、60年代初頭に複数のアーティストがパッケージでツアーを行っていた頃のロックンロール・レビュー・ショー的なわかりやすさと楽しさが満載となって、申し分ない内容になっていたと思う。

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    冒頭はまずバンドが登場し、イントロとともにリンゴも登場。ザ・ビートルズ時代のリンゴのボーカル曲として有名な“マッチ・ボックス”、リンゴのソロ活動を確立させた重要なヒット曲“It Don't Come Easy”、それと名盤『ラバー・ソウル』収録のリンゴのボーカル曲“消えた恋”と、リンゴの得意とするロカビリー/カントリー路線で押しまくる。“消えた恋”は「ザ・ビートルズの楽曲の中でも唯一、『レノン=マッカートニー=スターキー』とクレジットが書かれている曲です」などの一言コメントも面白い。

    中盤に披露した“Don’t Pass Me By”の前には「ぼくはビートルズに加わってから、数知れないほどに曲を書いたんだよ。でも、ひとつとしてレコーディングされることはなかった」というMCでウケを取ろうとしたのに、観客からの一方的な「リンゴ、アイ・ラヴ・ユー!!」という掛け声の連発にかき消されてしまい、「俺も愛してるよ!!」とヤケクソな返しになるところも愛嬌たっぷりだった。

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    冒頭4曲目はグレッグ・ローリーがボーカルをとり、サンタナの1stからの“Evil Ways”で、セットがいきなりラテン・ロックのグルーヴへと突入。ある意味、グレッグが加入してからのオール・スター・バンドはこのグルーヴ感が異常に気持ちいいことになっているし、このサンタナのギターをさらにスティーヴ・ルカサーが弾くことになっているのが、あまりにも鉄壁な布陣となっていて、60年代から70年代にかけてのロックが好きなら、これはたまらない展開。

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    続いてはスティーヴがボーカルを担ってのTOTOの“ロザーナ”。途中の高音ボーカルはパーカッションとサックス類を担当しているウォーレン・ハムがカバーし、パフォーマンス的にも完璧な適材適所。さらに、これに続いてはヘイミッシュ・スチュアートがメインの曲となり、それまでヘイミッシュが弾いていたベースをスティーヴが受け取り、ヘイミッシュはギターに持ち替えて、アべレージ・ホワイト・バンドのファンクが炸裂する“Pick Up the Pieces”を披露。この展開がこれまでのオール・スター・バンドにはなかったダイナミズムになっていて素晴らしい。

    ここにまた続くのがコリン・ヘイでメン・アット・ワークの“DOWN UNDER”。見事に80年代を代表するヒット曲が披露され、これが今回の回り持ち一巡目。楽曲、パフォーマンス、ジャンルの幅と奥行き、さらにメジャー感も含めて、今回のラインナップはまったく隙のないエンターテインメントとして成立していることを見せつけるものになっていた。

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    メン・アット・ワークもレゲエなどを積極的に導入したポップ・ロックを打ち出したバンドだったので、今回のオール・スター・バンドはどの楽曲についても文句なしのメジャー感を備えている上に、グルーヴ感もまた強力で個人的にはここがたまらなかった。各楽曲のばらけ方と通底する時代感という意味では、これまでで最もまんべんなく楽しめる内容になったと思うし、リンゴの楽曲が際立つという意味でも演出的に素晴らしかった。サンタナとTOTO、アべレージ・ホワイト・バンドとメン・アット・ワークを思う存分に堪能して、“ユア・シックスティーン”で盛り上がりまくる。とても稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった。(高見展)

    過去最高のメジャー感とグルーヴ感を打ち出した、リンゴのオール・スター・バンド。稀有で楽しすぎるロックンロール・ショーだった - pic by Masanori Doipic by Masanori Doi

    <SETLIST>
    1. Matchbox(CARL PARKINS/THE BEATLES)
    2. I Don’t Come Easy(RINGO STARR)
    3. What Goes On(THE BEATLES)
    4. Evil Ways(WILLIE BOBO/SANTANA)
    5. Rosanna(TOTO)
    6. Pick Up The Pieces(AVERAGE WHITE BAND)
    7. Down Under(MEN AT WORK)
    8. Boys(THE SHIRELLES/THE BEATLES)
    9. Don’t Pass Me By(THE BEATLES)
    10. Yellow Submarine(THE BEATLES)
    11. Cut The Cake(AVERAGE WHITE BAND)
    12. Black Magic Woman(SANTANA)
    13. You’re Sixteen(JOHNNY BURNETTE/RINGO STARR)
    14. Anthem(RINGO STARR)
    15. Overkill(MEN AT WORK)
    16. Africa(TOTO)
    17. Work To Do(THE ISLEY BROTHERS/AVERAGE WHITE BAND)
    18. Oye Como Va(TITO PUENTE/SANTANA)
    19. I Wanna Be Your Man(THE BEATLES)
    20. Who Can It Be Now?(MEN AT WORK)
    21. Hold The Line(TOTO)
    22. Photograph(RINGO STARR)
    23. Act Naturally(BUCK OWENS/THE BEATLES)
    24. With A Little Help From My Friends(THE BEATLES)
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