どうなる2021年? 海外夏フェスを総ざらい――改めて音楽の底力が問われるニュー・ノーマル時代を照らす希望の道筋とは

どうなる2021年? 海外夏フェスを総ざらい――改めて音楽の底力が問われるニュー・ノーマル時代を照らす希望の道筋とは

年明け早々に緊急事態宣言が発令され、パンデミックの収束には程遠い現実が突きつけられている2021年の日本。新型コロナウイルスの変異種が猛威を振るっているイギリスや、世界最多の感染者を出しているアメリカなど世界的にももちろん同様で、1週間先すら見通せない不安な日々が続いている。それでも少しずつ、そして着実に結論に近づきつつあるのが「2021年の夏フェスはどうなる?」問題だ。


「10万人の人がマスクなしで密集するイベントなんだ。実現できればいいとは思うけれど、難しいだろうね」と、ヘッドライナーとしての出演を予定しているグラストンベリー・フェスティバル2021の開催に悲観論を唱えたのはポール・マッカートニーだった。

しかし同フェスの主催者であるエミリー・イーヴィスは現時点で「グラストンベリーはまだキャンセルではない」、「我々はできることは全てやっている」とし、ポールの発言の火消しに追われた。ただその一方でイーヴィスは「政府はグラストンベリーを助けてほしい」、「もし2021年がキャンセルになった場合、チケットは2022年に持ち越される」とも語っている。


そんなグラストンベリー・フェスティバルを筆頭に、2021年1月の現時点で正式にキャンセルを発表した海外の主要夏フェスはまだない。10月への再延期が伝えられているコーチェラ・フェスティバルや、オンライン開催予定のSXSW、9月にミニマルな延期を決定したマンチェスターの「パークライフ」などのように、なんとか開催&存続の道を探っている。ちなみに昨年のチケットの払い戻しがなかったせいで訴訟まで起こされたのがウルトラ・ミュージック・フェスティバルだが、3月開催の同フェスですらまだキャンセルのアナウンスはない状態だ。


一方、英米と比較すれば幾分感染者が抑えられているEU諸国の主要フェスは、もう少し実際的な開催の可能性も高いだろう。あくまで比較論だが、ザ・ストロークスゴリラズの出演が決まっているスペインのプリマヴェーラ(6月)、タイラー・ザ・クリエイタートム・ヨークらが出演するデンマークのロスキルド(7月)あたりに希望を託したいところ。もっとも、イギリスのロックダウンが解除されなければトム・ヨークはそもそもデンマークに行けないわけだが……。


そんな中で今週、気になるニュースが飛び込んできた。イギリスの音楽業界団体が同国夏フェスへの政府の正式な支援を要請し、「このままでは1月中にキャンセルの判断をせざるを得ないフェスも出てくる」と危機を訴えたのだ。

https://www.bbc.com/news/entertainment-arts-55536355

イギリスの夏フェスは国の内外から観光客を呼び寄せ、多くの雇用を生み出してきた重要な産業のひとつだ。例えばグラストンベリーは例年およそ1億ポンド(約140億円)規模の経済効果をもたらしていると言われる。しかし、そうであってもイギリスの音楽産業は国からのサポートが決して厚いとは言えない状態だ。

「政府は夏までに普通の生活に戻るべきだと言うが、セーフティネットが提供されなければフェスティバルのない夏になるだろう」と関係者は語っているが、恐ろしいのはフェスティバルのない年は2021年だけではすまないかもしれないということだ。新型コロナウイルスのパンデミックによってキャンセルになったフェスに保険が適用されず、事業者が金銭的に救済されない現状が続く限り、今後の存続自体が危ぶまれるフェスが続出するだろうからだ。

また、仮に今夏にフェスが開催できたとしても、その場合は観客全員のワクチン摂取が必須であるというのも業界団体の共通見解になっている。数万人単位でワクチンを打つとなると莫大なコストが発生し、こちらもやるからには国のバックアップなくしては難しいだろう。

2021年はまさに夏フェスの命運がかかった年であり、開催実現、フェス存続のためのあらゆる可能性が試されて行くことになるはずだ。例えば電子チケット化はほぼ100%になるだろうし、キャッシュレス決済は当然のこと、フェス毎の電子通貨が生まれるかもしれない。入退場口の拡張に加え、エントランスでのミスト消毒やUV照射も議論されている。

フィールドを区切って観客間の距離を取ったフェスも既に試されているが、「フェスティバルとソーシャル・ディスタンスは根本的に相入れない概念」だと業界団体も語るように、従来型のフェスティバルを存続するためには前述のようにワクチン摂取が前提になってくるだろうし、その行き着く先では観客のワクチン・パスポート携帯、みたいな話になってくるかもしれない。

同時に従来型ではない、フェスティバルのあり方のニュー・ノーマルも急ピッチで開拓されている。フェスティバルへの参加に「現地組」と「自宅配信組」のチョイスが生まれ、後者の比率を上げていくことは今後避けられないだろうし、例えばグラストンベリーやフジロックなどでも実践されている生中継・生配信は、課金制の新たなシステムにバージョン・アップされていくことになるだろう。2020年に行われた多くの配信ライブの成功が、その道筋をつけたからだ。2021年、改めて音楽の底力が問われる年になりそうだ。(粉川しの)



『ロッキング・オン』最新号のご購入は、お近くの書店または以下のリンク先より。


どうなる2021年? 海外夏フェスを総ざらい――改めて音楽の底力が問われるニュー・ノーマル時代を照らす希望の道筋とは - 『rockin'on』2021年2月号『rockin'on』2021年2月号
rockinon.com洋楽ブログの最新記事
公式SNSアカウントをフォローする

洋楽 人気記事

最新ブログ

フォローする