レジェンドから新世代まで大集結! 没後5年、 デヴィッド・ボウイ74回目の誕生日を祝し捧げられたスペシャル・トリビュート・ライブ配信「A Bowie Celebration: Just For One Day!」を徹底レポート!

レジェンドから新世代まで大集結! 没後5年、 デヴィッド・ボウイ74回目の誕生日を祝し捧げられたスペシャル・トリビュート・ライブ配信「A Bowie Celebration: Just For One Day!」を徹底レポート!

デヴィッド・ボウイが亡くなってから5年が経つ今年、彼の74回目の誕生日を祝して企画された一夜限りのスペシャル・トリビュート・ライブ、「A Bowie Celebration: Just For One Day!」が開催された。当初の予定ではボウイの誕生日である1月8日に開催されるはずが、「昨今の世界情勢のため」にまさかの当日キャンセル! 混沌とした2021年の幕開けにふさわしい(?)そんなハプニングを挟みつつも、翌9日(日本時間1月10日)に3時間にわたって無事配信された。

「A Bowie Celebration」は長年ボウイと共に活動してきたピアニストのマイク・ガーソンが全面的にプロデュースしたイベントで、彼が司会として進行を担当。そんなガーソンの紹介でデュラン・デュランがトップバッターとして登場、彼らの“5 Years”で幕開けだ。


ここで早速明らかになったのが、今回の「A Bowie Celebration」の大部分は録画映像だということだ。世界各地に散らばる大物ゲストたちをリモートで繋いでリアルタイムでやるのではなく、作り込んだ映像と共に予め録ったものを「作品」として流すというフォーマットに、当初は戸惑うリスナーも少なくなかったようで、ビリー・コーガンの映像がブラウン管TVのような小さな箱(?)にはめ込まれた状態の“Space Oddity”や、ペリー・ファレルがシアトリカルなフリ付き(&時々リップシンク)でやった“The Man Who Sold the World”などの際には、リスナーのチャット欄にツッコミが押し寄せたりもした。

しかし今回のトリビュートのコンセプトは明確で、ガーソンやトニー・ヴィスコンティ、トニー・レヴィンらボウイのレガシーを受け継ぐ大御所たちが説得力のある土台を築いた上で、各ゲストにボウイの魂を降臨させるシチュエーションを作り上げることだった。そう考えればダダイズムみたいなビリーの“Space Oddity”や、どこかクラウス・ノミを彷彿させるファレルのそれもボウイ・スピリットに漲るパフォーマンスだったと言えるし、デヴィッド・ボウイをトリビュートするからにはやっぱりこういうアートな視点、ひねりが必須だったのだとつくづく感じる。単なる懐メロカラオケ大会をやっても仕方がないのだ。

そんな「A Bowie Celebration」のコンセプトをゲストたちもきっちり理解した上で見事にパフォーマンスに昇華していた。コリー・グローヴァーのソウルフルを極めた“Young Americans”、ボウイの長年のコラボレーターでもあったゲイル・アン・ドロシーの愛に溢れた“Can You Hear Me”などは大きな反響を呼び、チャット欄では冒頭のプチ炎上状態から一点、猛烈な勢いで拍手とハートとボウイを意味する稲妻のマークが流れ続けていた。

https://twitter.com/mikegarson/status/1348363461663752193

この日のショウを通してガーソンと共に大活躍だった一人がチャーリー・セクストンだ。銀髪のロマンスグレーになった現在の彼は、引きで見るとまるで2000年代のボウイのようで、“Let’s Dance”や“Rebel Rebel”での歌唱から、メイシー・グレイのボーカルがこれまたハスキーで最高だった“Changes”(ミック・ロンソンへのオマージュも!)でのギター・パフォーマンスまで、随所で見せ場を作っていく。ガーソンのピアノとチャーリーのギターが「A Bowie Celebration」の屋台骨の役割を果たし、ショウのコンセプトに一貫性を与えていたと言っていいだろう。


そしてこの日の中盤のハイライトだったのがラウド・ロック祭りと化したセッションだ。何しろデイヴ・ナヴァロ+テイラー・ホーキンス+クリス・チェイニーというとんでもないメンツが実際に集結してフルパワーの“Rock 'n' Roll Suicide”をぶちかまし、そこにさらにコリィ・テイラーまで参加して“Little Fat Man”を歌うという豪華コラボが実現してしまったのだから。

しかもその直後に登場したのがなんとゲイリー・オールドマン! シンガーとしてもプロ級のオスカー俳優が歌うティン・マシーンの“I Can’t Read”は、ガーソンの流麗なピアノと相俟って至高の仕上がり。憑依型、没入型俳優のオールドマンだけに、歌が進むに連れて文字通りボウイが重なって見えてくるのも驚きだった。


トレント・レズナー(with アッティカス・ロス)の“Fantastic Voyage”、“Fashion”も「トレントってこんなに歌が上手かったっけ?」と考えてしまうくらい端正な歌唱で、彼のボウイに対する感謝と真摯な思いが託された素晴らしいパフォーマンスだったし、そんなトレントからバトンを引き継ぐのがイアン・アシュベリー(“Lazarus”)という硬派なリレーになったのも最高で、ボウイのインダストリアル〜ゴシックの祖先としての側面を際立たせるセットだった。

後半はボウイと所縁のあるレジェンドが次々に登場する。例えばイアン・ハンターの“All the Young Dudes”やピーター・フランプトンの"Suffragette City "は感動的だったし、“Life On Mars?”のオリジナル・バージョンでピアノを弾いていたリック・ウェイクマンが、新世代代表のヤングブラッドとのコラボで同曲を演った意味は計り知れないほど大きかった。

最新作『ウィアード!』収録のその名も“Mars”でボウイにオマージュを捧げたヤングブラッドにとっても、悲願のパフォーマンスとなったはずだ。ボウイ・スピリットを次世代に手渡した意義の上でも、パフォーマンスの熱量、完成度の意味でも、ヤングブラッド×リック・ウェイクマンの“Life On Mars?”はこの日のベスト・パフォーマンスだったと思う。


全編引きのショットで収録されたボーイ・ジョージが、ビジュアルは抑えめでテクニカルな歌唱に徹したメドレーを聞かせた一方、キラキララメラメのエフェクト入りのド派手なビジュアル(小さな画面越しでも眩しすぎました)で登場したアダム・ランバートの“Starman”はフィナーレに相応しいゴージャスさ。

そしてザ・ローリング・ストーンズとのコラボでも知られるバーナード・ファウラーを迎えたラストの“Heroes”は、「We can be heroes just for one day」の一節にコロナ禍の一人一人を勇気づけ、希望を託す最高の幕切れとなった。「エンタテイメントに、そしてこの世界に、より良い未来が訪れることを祈っている」と最後にガーソンは言った。その未来には、今は別の星に行っているボウイがきっと待っていてくれるはずだ。(粉川しの)



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