ギネス認定の世界新記録をコンプリート! 世界でいちばん熱いバンド=キッス、ドバイからの史上最大級配信ライブ『KISS 2020 GOODBYE』で見せつけた、「さすがはキッス」の痛快ロジックとは?

ギネス認定の世界新記録をコンプリート! 世界でいちばん熱いバンド=キッス、ドバイからの史上最大級配信ライブ『KISS 2020 GOODBYE』で見せつけた、「さすがはキッス」の痛快ロジックとは?

世界でいちばんホットなバンド、といえばキッスのことだ。

「この言葉に続くバンド名は?」というクイズが出題されたならば、ロック・ファンの大半はそう答えることだろう。長きにわたり彼らのライブは「最高のものが欲しいなら、それは君たちのものだ。世界でいちばんホットなバンド、キッス!」というアナウンスとともに幕を開けてきた。その時代において本当に彼らが最高にホットであるか否かを問わず。


そのキッスが2020年最後のライブをストリーミング形式で実施した。それに際して事前に報じられていたのは「史上最大級の配信ライブをドバイにて実施」といったニュース。彼らの場合、史上最大とか世界最高とか、そういった言葉を使いたがる傾向がとにかく強い。他のものと比べてどれだけデカいかという問題ではなく、彼らが最大と言えばそれが最大なのだ。

しかも全世界に向けて生配信するのであれば演奏場所はどこでもいいはずだし、音響・照明設備の整ったスタジオでのライブでも充分に事足りるはずなのに、敢えて誰もやらないようなことを誰にも真似のできない規模で実践してしまうのがこのバンドのキッスたる所以なのである。ちなみにアラブ首長国連邦のドバイでライブを行なうのはキッス史上初のこと。史上最大級でしかも自己初。そうした言葉は彼らにとっての大好物なのだ。

実際にライブが始まったのは、12月31日の午後10時(ドバイ現地時刻)のこと。会場となったのはアトランティス・ザ・パームなる巨大リゾート・ホテルの敷地内に設えられた特設ステージ。もちろんそこに客席が用意されているわけではないが、このゴージャスなホテルで年越しを迎えようとしていた宿泊客たちだけは客室のバルコニーからの観覧が可能だった。

そして、その宿泊者たちの何千、何万倍もの数のファンが配信でその模様を楽しむことになった。オープニングの定番、“デトロイト・ロック・シティ”のイントロが聴こえてきた頃、日本ではすでに日付が変わり、2021年1月1日の午前3時になっていた。


その幕開けの時点で明らかだったのは、とにかくパイロの使用量が桁外れだということ。キッスのショウはただでさえ火気厳禁の真逆をいくものだが、ステージ上でガンガン炸裂するばかりではなく、ホテル周辺の上空が大量の花火で彩られるのだ。

そして2曲目の“狂気の叫び”を演奏し終えたところで、ポール・スタンレーは「ハロー、ドバイ! ハロー、プラネット・アース! 2020年にさよならを告げよう」と挨拶。


実際、この配信ライブは『KISS 2020 GOODBYE』と銘打たれていた。「2020年にお別れのキスを」というわけだ。バンド名がキッスだからこその単純明快なタイトルではあるが、常にオーディエンスの気持ちをポジティブな方向にだけ導き続けてきた彼ららしさが感じられる。新型コロナ禍の影響で散々だった2020年は、どんな人にとってもネガティブな記憶の伴う年だったはず。

しかしこのタイトルからは、そんな年に対しても慈しみのキスをして、新たな気持で新年に向かおうじゃないか、といった呼びかけが聞こえてくるように思う。

キッスはこのライブを通じて、全22曲を披露した。彼らのライブに欠かせない鉄板曲が網羅されたその演奏内容自体には、特にこれといった目新しさはなかった。が、常に惜しみなくすべてを提供しようとするサービス精神たっぷりのライブに、配信を通じてその様子を見守っていた全世界の視聴者は満腹感を味わっていたに違いない。

細かいことを言えば、たとえば“雷神”をプレイする際にいつも披露されているジーン・シモンズの吐血パフォーマンスが削られていたこと、いくつかの曲で歌詞に手が加えられていたことなど、演奏地がドバイだからこそだとおぼしき変更点が見られたことも確かだが、それが物足りなさに繋がるわけではなかった。


最後の最後に炸裂したのは、当然ながら“ロックン・ロール・オール・ナイト”。生まれ育った地域や肌の色、世代などを問わず、ロックン・ロールを愛する地球人すべてにとって共通のアンセムというべきこの曲とシンクロしながら夜空を彩った花火の過剰なほどの艶やかさが、2021年という新たな年に対する最大級のエールであるかのように感じられた。


その“ロックン・ロール・オール・ナイト”が演奏される直前、その場に似つかわしくない風体の人物がステージ上に招かれた。ギネスからの使者である。なんと、その場でこのライブは「史上最高の高さのフレーム・プロジェクションを伴い、史上最多量のパイロが同時に発火された音楽コンサート」として認定されたのだった。

正直、筆者自身も「ギネス世界記録にはそんなものまで記載されるのか」と半ば呆れながら感心させられると同時に「果たしてその分野でキッスと競おうとする者が他にいるのか?」という素朴な疑問を感じさせられたが、どうあれキッスが“世界でいちばんホットなバンド”のまま2021年を迎えたことは間違いない。

2019年12月に行なわれた「最後のジャパン・ツアー」を経て、本来ならば2020年も世界各地を巡演し、2021年7月にニューヨークでライブ・バンドとしての有終の美を飾ることになっていたキッス。パンデミックは、そうした彼らの計画にも大きな影響を及ぼすことになった。

当然ながら物語の終着点到来も先送りになるはずだし、そこに至るまでの筋書きも変わってくるに違いない。
が、これは彼らが過去に経てきた予定変更や引退撤回などとは意味合いが違うはずのもの。この先の“いちばんホットなバンド”の動向に注目したい。(増田勇一)



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