レゲエ、ヒップホップ、R&B。自分がとくに好む音楽やカルチャーが、日本で「ど真ん中」に来たことがあまりない。そのため、パンデミック明けからのブルーノ・マーズの絶大な人気には少々戸惑っている。
2010年のデビュー以来、ブラックミュージックを背骨にした良質のポップミュージックを作り続けている、人気アーティストではある。だが、少なくとも2018年のさいたまスーパー・アリーナでの『24K・マジック・ワールド・ツアー』ではそこまでチケットの入手は苦労しなかった。ソロ作が出ていない2020年代に入って、大人気になったのも不思議だ。
SNSの使い方を含めたマーケティングの切り口からも、説明はできるだろう。でも、ここは少しロマンティックに「彼の音楽性が日本人にしっくりくるから」という仮説のもと、レポートを書いた。ハワイ出身のブルーノの音楽には適度な湿気—メロディラインにも、歌詞にも—があるのだ。
アメリカには、人口調査などのためにアジア・太平洋諸国系アメリカ人(Asian Americans and Pacific Islanders /AAPI)という区分がある。私たちと近い日系人と、ハワイ出身のブルーノ・マーズは大枠では同じグループなのだ。洋楽離れが叫ばれて久しい日本で彼がひとり勝ちしている理由のひとつに、お互いがもつ親近感もあるのかも、とちらっと思った。 (池城美菜子)
ブルーノ・マーズのライブレポートが掲載されるロッキング・オン3月号