9月にCDリリースされた、ジミが1970年7月4日の独立記念日にジョージア州アトランタのポップ・フェスティヴァルに出た時の映像。公共施設では黒人と白人の席を分けるなんて法律が大手を振っていた時代、人種差別の中心の南部でジミのような人がライヴのトリを飾ること自体が事件だったわけだが、そんな時代性を浮かび上がらせるドキュメンタリーが前半に付いている。演奏だけで充分、と言いたくなるだろうが、ここらを認識しているとプレイ全体の味わいも変わってくる。

平日はNYでレコーディング、週末は北米のあちこちでライヴと、とんでもないスケジュールで動いている時なので疲れは見られるものの、演奏はやはりとてつもないレヴェル。“鏡の部屋”、“自由”といった出来たてホヤホヤ・ナンバーから“フォクシー・レディ”、“紫のけむり”などの定番まで、どれも南部を突き刺す霊気が指の先から漂う。ウッドストック以来、どこでも求められたアメリカ国歌“星条旗”だが、この地でやるのはジミにも特別な思いがあるのだろう、ウッドストック以上の出来映え。花火をバックにしたこの曲だけでも震えがくる。（大鷹俊一）