アナログの揺らぎに身を任せる至福

OGRE YOU ASSHOLE『ペーパークラフト』
2014年10月15日発売
ALBUM
OGRE YOU ASSHOLE ペーパークラフト
紙細工、というより芝居や映画に使う書き割りのようなイラストのジャケットが、見事に本作の内容を物語っている。ミニマルでアナログな隙間たっぷりのサウンドと、薄っぺらで空疎な社会や人間関係を冷めた視線で語る出戸学の声が、くぐもったエフェクトを通して響く表題曲。淡々と鳴るエコーを増幅したギターと声だけなのに引き込まれ、5分強の曲が5分に感じられない。徹底してアナログ機材を駆使して作られた揺らぐ音が、人の感覚を引き延ばすのだ。他の曲も然り。約7分半の“他人の夢”ではギターが様々な揺らぎを作り出し、“見えないルール”では反復するリズムとオルガンがファンクなギターと共鳴していく。ラテン・パーカッションが活躍する“無駄がないって素晴らしい”さえ催眠的な響きに惑わされる。インドネシアでは、こんな時間感覚の伸び縮みを「ジャム・カレット」と言う。これで4作目になる石原洋・中村宗一郎とオウガとのタッグが、本作では一つの頂点を作り出した。“誰もいない”の最後が“明るい部屋”のイントロと重なるのは、何の啓示なのだろうか。気になる。(今井智子)
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