夜と朝の間

本棚のモヨコ『TOMORROW NEVER KNOWS』
2014年11月12日発売
ALBUM
本棚のモヨコという名前にも現われている通り、文系的な繊細さとひねくれた感覚を持ったバンド。これが、初のフルアルバムである。男女五人組でギターの森脩平がメイン・ヴォーカルだが、キーボードのゆちよも歌う。男女のコーラスが入るし、メロディにもサウンドにも優しさがあって、全体の方向性はポップだ。とはいえ、ギターがシューゲイザー的でノイジーな場面も多い。単純にポップなわけではない。それが、森の一筋縄ではいかない詞と一緒になって独特の雰囲気を作り出す。
“新世界ようこそ”から始まり、リード・トラックの“朝色”で終わる構成になっている。新世界、朝、そしてアルバムタイトルにも入っている明日など、前向きな一歩を意味する言葉が多く出てくる。しかし、同時に朝になる前の夜、目覚める前の夢についても多く歌っていて、夜と朝で綱引きしているような、揺れる心持ちがある。“宇夜夢夜”と書いてうやむやと読む曲など、特にそうだ。ちょっとためらって迷いながら踏み出す感じ。その一歩にはリアリティがあるし、共感できる。(遠藤利明)