2年ぶりとなる7枚目のアルバムで、おとぎ話は変革の刃を見せた。ふたつのロックチューン“運命” “きゅーと研究会”で幕をあける本作は、サウンドがよりエッジーでシャープになった。ファニーでアヴァンギャルドな従来のおとぎ話の世界観は踏襲しつつ、《かつて／ディランが率いたTHE BANDに／僕はいなかったんだね／だから今／素晴らしいバンドを組んでいるんだ》（“FRIENDS”）とバンドの充実ぶりをストレートに歌うことができる今だからこその、ひとつひとつの音粒がフレッシュで喜びに溢れている。音楽愛と膨大な情報量を一曲一曲に閉じ込め、グッドメロディへの追求をやめない彼らの姿がある。

涙や痛み、青春期の情熱や葛藤や諦念。おとぎ話は、そんな誰もが持つであろうナイーヴな感情を抱えながら笑って生きることを、時にひねくれつつ、時に涙を誘うほどに美しく描く。瞬間の感情を優しく掬い取り、その瞬間それぞれがエターナルな輝きを放つ――本作には、そんな音楽の魔法に溢れている。聴く度に新たな発見がある、エバーグリーンな名曲が揃う一枚。（岡崎咲子）