前作『photogenic』から3年ぶりとなる5thアルバム。この3年、精力的にライヴ活動を行いながらストイックに歌と向き合ってきた。10周年を迎え、届けられた今作『Android & Human Being』を聴くと、これまでSalyuがその時々でポップとの距離感や楽曲との関わりを変えながら常に勇敢に歌と向き合ってきた歴史や、リリィ・シュシュを含めデビュー当時からずっとプロデューサーの小林武史が彼女の中に見出してきた表現の可能性などが、ひとつの大きな海に辿り着いたような感動がある。プログラミングされているかのように正確にビートの波に乗り歌いこなす“非常階段の下”や、シリアスな景色と本音を暴くような心情を受け止めるようなヴォーカルが清々しい“有刺鉄線”、声そのものが光の役割を果たしているような“希望という名の灯り”など、サウンドも声の質感も様々な手法で物語は運ばれる。どんな幻想も現実も、温もりも冷たさも、光も闇も、Salyuが歌うことで歌の中に探り当てていく。聴き手にとって、この向きあいこそが胸を打つし、今だからこその快感と面白さと発見に満ち溢れた1枚。(上野三樹)