『ピンプ』と対の豊饒な音源集

ケンドリック・ラマー『アンタイトルド・アンマスタード』
ケンドリック・ラマー アンタイトルド・アンマスタード
昨年のUSヒップホップやブラック・ミュージック最重要作品『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』制作時のデモ音源を収録したのがこの作品で、タイトル通り、マスター前のアウトテイク音源集だ。しかし、これだけを聴いたとしたら、一体なぜこれがアウトテイク集なのかと呆気にとられる内容になっている。基本的にテーマ的な取り組みは『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』と同じで、ケンドリック自身の経験と黒人としての経験をオーヴァーラップさせながら問題意識をあぶりだすアプローチをとっている。ただ、トータルなブラック・ミュージックとして取り組むという趣旨をより明確に打ち出したサウンドが揃っていて、ある意味で『トゥ・ピンプ・ア・バタフライ』より多様性に富んだ音にもなっている。そこがまさに”アウト”になった理由だ。ケンドリックとしては自身の経験をよりエグいものとして伝えたかったわけで、だからこそ最終的に徹底してファンクに拘り、あそこまでの緊張感を生み出したのだ。つまり、シーローと共演するM6のように、本作の音は気持ちよすぎたのだ。それでも、本作が名曲揃いになっていることには変わりない。(高見展)
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