サポートベーシストが鈴木淳から有江嘉典に交代したことと、本作に5人のベーシストが参加したことは関係ないと山中さわおは言っていたので、とりあえずそのまま受け取っておこう。その5人は、初代ベーシストの上田健司、続く鹿島達也、山中とTHE PREDATORSを組むJIRO、25周年トリビュート盤にも参加した髭の宮川トモユキ、そして現在のサポートである有江。27年の歴史を振り返るような構図に見えるが、言うまでもなくそんな姿勢は微塵もない作品だ。あるとすれば、27年の間にピロウズが培ってきたタフなロックンロールは少しもブレておらず、この道は間違っていなかったのだという自信だろう。メンバーだったころは衝突ばかりしていたという上田とのパンキッシュなナンバーや、ヒットに恵まれた鹿島とのパワフルなポップが、その証だ。一方、今はラモーンズみたいなことをして楽しんでいるTHE PREDATORSと違い、バンドの一員のように曲に臨んでくれたというJIRO、先輩後輩を超えてガチ勝負している宮川、そして新しい1ページを共に作っている有江。過去は未来のためにあるのだ。（今井智子）