時代が求めた音

YEN TOWN BAND『diverse journey』
発売中
ALBUM
YEN TOWN BAND diverse journey
YEN TOWN BANDは岩井俊二監督の『スワロウテイル』(1996)に登場する架空のバンドだ。プロデュースは小林武史で、ボーカルはChara。これは約20年ぶりの2ndアルバム。映画の中だけの架空だったはずのバンドが、なぜ今復活したかといえば、時代が求めていたからだ。経済万能主義、悪しきグローバリズムの限界が露呈しつつある今、そのオルタナティヴとしての、より人間的な手触りを持った音と言葉が必要とされていた、というわけだ。20年前から変わらぬ自由でオーガニックで解放された人間のスピリットを表現する。数々のヒット作を送り出してきた小林だからこそ、その必要性を切実に感じていたということだろう。プロデューサー/音楽家としての小林は、研ぎ澄まされた音楽的レベルの高さを感じる一方、時にやりすぎ、というか語り過ぎな面もあって、アーティストによってはオーヴァープロデュース気味にもなるのだが、本作は抑制が効いていて、曲も歌詞もよく練られていて聴き応えがある。音数は多いが、アーティストの誠意と熱意が溢れている。今後は長く、コンスタントな活動を期待。(小野島大)
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