若い世代から支持されてきたAqua Timezも、今作で7thアルバムを数え、メンバー全員が30代後半へと差し掛かった。そのためか、今作は「大人としての自分たちから、若い世代に届けるメッセージ」や「子どもの頃を振り返ったファンタジックな世界観」が際立っている。「若い世代の等身大の魅力」というかつての武器に頼っていない理由は、きっと、現在進行形のバンドであるというアイデンティティの表れだろう。元々バラエティに富んだ曲や、胸に刻まれる歌詞を書いてきた彼らだけれど、《人の厳しさが尖った氷にしか思えずに／ここまで　ここまで　来てしまったけど／二度と逢えない人がくれたその氷は今／こんなに　あたたかい　涙になった》（“生きて”）などといった一節は、経験を積んだ今だから書けたに違いない。そんななかで、“ナポリ”～“三日月シャーベット”のユーモアがちりばめられている流れも、エンターテイナーの手腕が発揮されていて秀逸。J-POPの世界で揉まれてきた成果が表れた、「聴かせたいこと」と「聴いてもらうためにやるべきこと」のバランスが、心地好く取れた一枚だ。（高橋美穂）