凄まじい傑作。本年最重要作

アルカ『アルカ』
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ALBUM
アルカ アルカ
先月号の「最新洋楽シーン徹底検証」の「エクスペリメンタル」の稿を書いた時はまだ聴いていなかったが、聴いていれば当然これを真っ先に挙げるべきだった。2年ぶり3枚目。

本作の8ヵ月前、アルカは自らのサウンドクラウドで14曲入りの新作ミックステープ『Entranñas(内臓)』を発表しており、その中の1曲“シン・ルンボ”はここにも収められている。『Entranñas』はかなりハードでノイジーなインダストリアル性が打ち出された作品だったが、今回の『アルカ』はむしろ狂おしいほどに張り詰めた静かなテンション・バランスの中を、ぱっくりと開いた傷口から血を流しながらそろりそろりと幽霊のごとく歩いていくアルカを見るような、そんな凄絶な美しさが印象に残る。沈潜する悲しみとゆらゆらと虚空を漂う喪失の念。研ぎ澄まされた音響感覚と触れれば切れそうな鋭利な感性。故国ヴェネズエラの伝説的歌手、シモン・ディアスをサンプリングして敬意を表した“レヴェリー”の深く抉られるような痛み。ジェシー・カンダの手がけた“アノーチェ”の衝撃的なミュージック・ヴィデオも含め、間違いなく今年の最重要作と断言できる。(小野島大)
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