アンセムだらけのパンク作

ランシド『トラブル・メーカー』
発売中
ランシド トラブル・メーカー
1分を切った快速パンク・ロック“トラック・ファスト”で幕をあける9作目のアルバム。『トラブル・メーカー』というタイトルは、前身となるオペレーション・アイヴィーから数え、約30年をバンドとして、ミュージシャンとして重ねてきたランシドそのものと言えそうだ。ストリートに根ざしたパンク、ロックンロールの精神を、タフで荒っぽいバンド・サウンドに写し、コブシを掲げて歌い上げるような17の大合唱曲が揃った。3コードのパンク・ロックも、“ウェア・アイム・ゴーイング”のような定番的なスカ・パンクも、“バヴァ・ロック・アンド・ロール”のダーティにぶっ飛ばしていくロックロールも、いずれもシンプルながらねじ伏せていくようなパワーがあって、貫禄たっぷりだ。勝手知ったるエピタフのオーナーにしてバッド・レリジョンのブレット・ガーウィッツとのレコーディングで、音のみならず、パンク・バンドが放つ気迫や背負っているマインドを丸ごと収録しているのも感じられる。生々しく、息づいているサウンドに痺れる。不屈の精神で、闘いながら日々を生きていく。その傍で鳴っていてほしい音楽だ。 (吉羽さおり)
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