シングルB面曲やコンピ提供曲、未発表曲を集めた一枚。古くはデビュー以前の音源から、直近の2枚のアルバム『ディプレッション・チェリー』&『サンク・ユア・ラッキー・スターズ』と同時期に録音された音源まで14曲を収録。その10余年にわたる活動を通じた曲調の変遷、サウンド/プロダクションの試行錯誤、また同時代の音楽シーンとの距離感を改めて検証できる内容となっており、キャリア総覧的な価値も備えているところが本作の肝だろう。たとえばフリー・フォークやブルックリンのインディ勢、あるいはシューゲイザーのリバイバルやチルウェイヴ以降のサイケデリックなベッドルーム・ミュージック……といった周囲を流れる音楽風景のなかで、かれらのシグネチャーである「ドリーム・ポップ」はどう形作られてきたのか。試しに最初期の ⑪と『ティーン・ドリーム』(10年)の頃の⑤⑨、そして新曲の①⑥を順に聴いてみれば、そこにはその軌跡を窺い知るヒントが自ずと浮かび上がってくるはずだ。一方でクイーンのカバーの⑧のような、かれらの遊び心に触れる楽しさも本作にはある。コアなファン以外の方もぜひ。(天井潤之介)