『007 スペクター』主題歌の“ライティングズ・オン・ザ・ウォール”以来となる新録新曲である本作は、年内のリリースが噂されているサム・スミスのセカンド・アルバムからの先行シングルだ。ピアノとサムのボーカルだけでワン・コーラス丸々と歌い切る抑制の利いた前半から、後半はゴスペル・コーラスのインサートでドラマティックに転調していくが、どこかひんやりとした冷気が最後まで漂っている。今回も失恋の歌だが、歌詞においても彼の情念に「湿度」の変化を感じる。
「君が僕を傷つけるたびに、僕は泣かなくなるんだ 君が僕を捨て置くたびに、涙は乾いていく」と歌われる本曲は、「こんなの愛じゃないってわかっているけど それでも君にそばにいて欲しい」とメロドラマを繰り広げたかつての“ステイ・ウィズ・ミー”と比較すれば、哀しみを達観したニヒリズムに注目せざるをえないのだ。頬が削げてぐっとシャープになったサムの最新ビジュアルも含めて、彼の歌に向かう動機そのものに転機があったのか? アダム・ランバートからクリーン・バンディットまで、様々なコラボレーションが噂されている新作、その変貌に期待。 (粉川しの)
アルバムでも涙は乾くか
サム・スミス『トゥー・グッド・アット・グッバイズ~さよならに慣れすぎて』
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