音に身を任せて探す素敵な場所

パスピエ『OTONARIさん』

発売中

パスピエ OTONARIさん
「懐古」が慣れ親しんだものへと立ち還ろうとする姿であるのに対して、「郷愁」が向かう先はとても漠然としている。心底懐かしく感じるものの、その理由の正体はよくわからず、もしかしたらこの世には存在しないものを探し求めているのかもしれない……という幻に憑かれた冒険衝動を示すのが「郷愁」という言葉なのだと思う。そしてパスピエの音楽も、そういうイメージと結びつく。ニューウェイヴやポストロック的な風味、クラシカルなアプローチやモダンなエッセンスが絡み合い、他の何物にも似ていないスタイルへと突き抜けるサウンドは、刺激的であると同時に心安らぐ懐かしさがある。ファンキーなビートの向こう側から美しい光が見えてくるかのような“音の鳴る方へ”、瑞々しいメロディがひたすら心地好い“あかつき”、サイバーなダンスミュージック的な風味が印象的な“ポオトレイト”など、今作に収録されているのも、まさにそういう曲たちだ。今年の5月、ドラマーが脱退したことに伴い新編成となった彼らだが、自分たちの表現の核にあるものを改めて見つめて歩み始めているのかもしれない。(田中大)

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