シャバとムショを往復しながらも精力的に活動を続けるアトランタの重鎮。2016年の出所以来、もの凄い勢いでリリースを続ける彼の、これは通算11作目のフル・アルバムだが、とにかく作品の数が多い人で、ミックステープはその数倍の数があって、とても全貌を把握しきれない。だがこれは彼にとって過去最高タイとなる全米2位を記録、自ら「マイ・ベスト・アルバム」と胸を張るように、このベテランの底力を示した傑作だ。

ミーゴス、ウィークエンド、ニッキー・ミナージュ、エイサップ・ロッキー、クリス・ブラウン、タイ・ダラー・サイン、スクールボーイ・Ｑなど、豪華すぎるゲストの話題性もあるが、中身はグッチらしい切れ味のいいワイルドなフロウ、重低音を効かせた重厚なトラックのコンビネーションが抜群で、ヘッドホンで聴くと音像のリアルな実在感に驚く。ゲストとの調和も手慣れたもので、飛び道具ニッキー・ミナージュを、ここまで自分の庭で使いこなした例は少ない。

なんと本誌が出る頃には早くも次のアルバムがリリースされているはず。恐ろしいほどの創作意欲とエネルギーだ。脱帽。（小野島大）