ジェイムス・ブレイクの突然のシングル。ヨーロッパ・ツアーが始まるので、新作リリースも控えているのだろうが、まだ詳細はわからない。ただ、このシングルはあまりに新しい境地に突き進んでいてすごい。彼は基本的にどれだけクラブ・サウンドやエレクトロニック・サウンドを曲に投じたとしても、楽曲の構造やボーカルのあり方についてはかなり保守的な姿勢を貫いてきたと思うので、この曲はそのどちらの意味でも、完全に自分の作品世界を壊していくような試みになっているといってもいい。歌詞は「自分の隣を走り過ぎて行った車があまりにも速くてまるで自分が止まっているかのように思えた。自分の車が後ろに動いているわけでもなく」という心象を、どこまでも加工され、断片化されたボーカルとエレクトロニック・サウンドで綴るものになっているのだが、このどちらかといえば文学的な心象描写が声の加工のせいですさまじい叫びと化している。これはすごすぎる。（高見展）