暴動の中、夢をくぐって真我へ

ヨ・ラ・テンゴ『ゼアズ・ア・ライオット・ゴーイング・オン』
発売中
ヨ・ラ・テンゴ ゼアズ・ア・ライオット・ゴーイング・オン
愛と平和の60sが終わり、現実が重くのしかかる1971年、スライ&ザ・ファミリー・ストーンが放ったアルバム『暴動』は、現代のフランク・オーシャンにまで綿々と繋がる内省的なファンクの原点だ。そしてこの名盤とほぼ同じ原題を掲げたヨ・ラ・テンゴの新作。両者に共通しているのは、時代の社会的背景、過激なタイトルとは裏腹に、個へと沈みゆくような感覚だ。ここでの彼らはノイジーなギターではなく、ウッドベースが奏でるコルトレーン『至上の愛』のようなフレーズ、ザ・フラミンゴスを彷彿とさせる夢見心地なドゥーワップ、ホテルのラウンジでかすかに流れていそうなボサ・ノヴァといった、奇妙な心地よさをちりばめながら、異次元のドリーム・ポップを作りあげた。トータスのジョン・マッケンタイアによる「端正でありながらハードコア」なミックスが導くこの桃源郷は、いまを生きる者への精神安定剤でありながら、世界との軋轢に対峙する力をも与えてくれる。(片寄明人)
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