今こそ響かせる「解放」の音

フーバスタンク『プッシュ・プル』
発売中
ALBUM
フーバスタンク プッシュ・プル

ハイエナジーな躍動感を注入したR&Bのような“ドント・ルック・アウェイ”。眩いくらいのポップ咲き乱れる表題曲“プッシュ・プル”。ディスコ・ファンクのビート感&クリーン・トーンのカッティングが弾み回る“モア・ビューティフル”。ハイブリッドな質感のギター・サウンドがサイケデリック・ハード・ロック的な浮遊感を描き出す、ティアーズ・フォー・フィアーズ“ヘッド・オーヴァー・ヒールズ”のカバー・バージョン……。前作『ファイト・オア・フライト』から約6年ぶりとなるフーバスタンクの、冒頭から意外な展開に満ちた新作アルバムはしかし、聴き進めるごとに脳内の「?」が「!」に痛快なまでに上書きされる。そんな作品だ。

マルーン5のデビュー作などを手がけた長年の友人マット・ウォーレスを初めてプロデューサーに迎えた今作。ラウドなギターが鳴り渡る“トゥルー・ビリーヴァー”も“ベター・レフト・アンセッド”も、マルチプラチナ・バンドである自分たち自身を「ビートの多彩さと楽しさ」越しに再定義&再構築した4人の挑戦精神を窺わせるし、戦場で命を落とした兵士の残された家族に想いを馳せた雄大なナンバー“フォーリン・スター”は、彼らの代表曲でもあるラウド・バラード“ザ・リーズン”とは一線を画した力強さを感じさせる。もう十分に大人になった彼らが、その蒼く不屈の音楽探究心を、U2/デュラン・デュランといった80〜90年代リアル・タイマーとしてのルーツ感も含めて「今」のタフネスでもってぶん回していることが、今作の自由な色彩感からも伝わることと思う。アコギのストロークと美麗ハーモニーで無防備な解放感を響かせる“ジャスト・レット・ゴー(フー・ケアズ・イフ・ウィ・フォール)”は、彼らの「最新型」の何よりの象徴だ。(高橋智樹)



『プッシュ・プル』の詳細はUniversal Music Japanの公式サイトをご確認下さい。

フーバスタンク『プッシュ・プル』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
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フーバスタンク プッシュ・プル - 『rockin'on』2018年7月号『rockin'on』2018年7月号
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