元々のバンド形態から、フロントマン、ブレンドン・ユーリのひとりユニットとなったパニック!アット・ザ・ディスコ。その最新作は、彼の頭の中に入り込んで、ジェットコースターに乗って、次々に想像力あふれるアトラクションを巡るような楽しさと興奮がある。ブレンドン曰く、自宅スタジオで友人たちと語らい、また新しい音楽アプリを使って国も年代も超えた未知の音楽探検をしながら、作られたアルバムだという。前作『DEATH OF A BACHELOR/ある独身男の死』は、彼のポップ・センスが花開き、またフランク・シナトラなどスタンダードなポップスの魅力をモダンにアップデートして、グラミー賞にもノミネートされた。今作は、その流れも汲んではいるけれど、もっと楽しく、もっと奇想天外で、なおかつどこまでも音楽的な醍醐味が詰まっている。先行で公開された2曲“(ファック・ア)シルヴァー・ライニング”、“セイ・アーメン(サタデー・ナイト)”を聴いた時点で、バンド・サウンドにとらわれない音色豊かな曲が揃いそうな予感があったが、アルバムの内容は想像以上だ。リズミカルなシンセを基軸にしたダンス・ミュージック、ホーン・セクションとメロディのハーモニーに気分が上がるアンセムや、サルサ的な灼熱のビートをドリーミーな万華鏡ポップに閉じ込めた曲。また抑えた歌のトーンでグルーヴを際立たせたR&Bや、ド派手なアクション映画でもはじまりそうな曲など、それぞれ1曲約3分に濃厚なドラマが詰まっている。友人との会話を通じて、自分自身を振り返り、自然と自身の人生、人生観が曲に繋がったと、ブレンドンは語る。アルバム『プレイ・フォー・ザ・ウィキッド』は、彼にとってのゴスペル的な、幸せを呼び込む福音的な音楽の形なんだろう。(吉羽さおり)
『プレイ・フォー・ザ・ウィキッド』の詳細はこちらの記事より。
パニック!アット・ザ・ディスコ『プレイ・フォー・ザ・ウィキッド』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」7月号に掲載中です。
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