おそらくモリッシーほどスミスという自身の過去のキャリアを愛しているアーティストはいない。そして、スミスというバンドを作り出した自分はどのようにして生み出されてきたのかということを、朗々と綴っていくのがモリッシーのソロ・キャリアの魅力だ。もともとスミスが苦手だったぼくなどもモリッシーを聴いているうちに引きずり込まれてしまったのだから、モリッシーの魅力は魔物のようなものだ。本作は大復活作となった『ユー・アー・ザ・クワーリー』で起用したジェリー・フィンをプロデューサーに再抜擢し、前回と較べると、ポップ・パンクの傑作の数々を生んできたフィン色をかなり打ち出した作りになっている。そして、タイトルにある通り、中年に至った自分の今をあらためて「反抗期」として自覚する本作の内容にまさにふさわしいサウンドになっている。惜しくもフィンはこの作品の完成直後に卒中で他界しただけに、モリッシーのインスピレーションは神懸り的だとしかいいようがない。「きみの絶望が必要としているのは自分だけ」と訴える“オール・ユー・ニード・イズ・ミー”などは去年のベスト盤に収録されていた既発曲だが、「鉄と石まみれのパリという都市にしか自分の愛は受け入れられない」と歌うM4からの流れで聴くと、自身の愛の不可能性をたたみかけていく展開をとって猛烈なカタルシスを生みだしていく。ほとんどデヴィッド・ボウイの生き写しと化しながら「もうきみの誕生日は終わったんだから」と毒づくM9などはトニー・ヴィスコンティへの当てつけか。個人的には『マルアジャステイッド』以来の痛快な毒を堪能した。(高見展)