モダンを愛する男の普遍の在処

ポール・ウェラー『トゥルー・ミーニングス』
発売中
ALBUM
ポール・ウェラー トゥルー・ミーニングス

今年5月25日に還暦を迎えたポール・ウェラー。70年代から脈々と続く彼のキャリアを思えば「まだ60歳なのか!」と驚く人もいるかもしれない。でも、ウェラーについて驚くべきポイントは年齢自体ではなく、77年からこの2018年まで途切れることなく新作を出し続ける驚異の永続性においてだろう。そんな彼が、今年の誕生日に新曲“アスペクツ”をリリース。ニック・ドレイクから影響を受けたという同ナンバーは、アコギとクラシックのストリングスが織りなす流麗なフォーク・ソングだったわけだが、“アスペクツ”の方向性はこのニュー・アルバムにも引き継がれていると言っていい。前作『ア・カインド・レボリューション』がソウルやジャズ、ディスコのレア・グルーヴからボサ・ノバやカリプソまで、ウェラーの熟しきった経験と知識の結晶的作品だったのに対し、本作はある意味で成熟の不可逆性から外れたところにそっと息づく、ウェラーの不変のリリシズムの結晶的作品だ。蒼きパンク・ヒーローから野郎が憧れるモッド・ファーザーへと続くその明確なパブリック・イメージの奥底に、彼は常にパーソナルな柔らかさをこうして折を見て作品に反映させてきたアーティストでもあるのだ。

前作ではロバート・ワイアットボーイ・ジョージの参加が話題を呼んだが、本作にもゾンビーズのロッド・アージェント、リトル・バーリーのバーリー・カドガン、マーティン・カーシー、ルーシー・ローズ、ダニー・トンプソン、そしてノエル・ギャラガーと、錚々たるメンツが集結している。本作の基調となっている、イングランドの深い森を分け入るようなアシッド・フォークやチェンバー・ポップは、まさにゾンビーズの『オデッセイ・アンド・オラクル』へのオマージュを感じさせるものだし、アージェントがハモンドを弾いているオープニングの“ザ・ソウル・サーチャーズ”は、本作のベスト・トラックと呼ぶべき渾身のコラボになっている。ブリティッシュ・フォークの大御所カーシー、トンプソンの参加も納得の極み。ゲスト陣でどの曲で何をやっているのか皆目見当が付かないのは、ノエルだけだろう。

また、ウェラーは本作収録のその名も“ボウイ”を、亡きデヴィッド・ボウイに捧げている。彼とボウイが長らく不仲だった(ウェラーが一方的にディスっていたとも言う)のは有名な話だが、2000年代に入ってからふたりは和解、近年では友人関係を築いていた。十分に大人になってからようやく理解し合えた天国の友に、メロウでピュア、そして無防備なハートをそのまま差し出すような、感動的なナンバーなのだ。(粉川しの)



ポール・ウェラー『トゥルー・ミーニングス』の詳細はWarner Music Japanの公式サイトよりご確認ください。

『トゥルー・ミーニングス』のディスク・レビューは現在発売中の「ロッキング・オン」10月号に掲載中です。
ご購入はお近くの書店または以下のリンク先より。

ポール・ウェラー トゥルー・ミーニングス - 『rockin'on』2018年10月号『rockin'on』2018年10月号
公式SNSアカウントをフォローする

最新ブログ

フォローする