時代の群像に刻む「ひとり」の証

ズーカラデル『ズーカラデル』
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ALBUM
ズーカラデル ズーカラデル
僕らの不器用さも飾り気のなさも含めて痛快にドライブさせる青春群像劇のようなバンドアンサンブルの躍動感と対照的に、ズーカラデルの音楽は聴く者を実に正しく「ひとり」へと解きほぐし、自分という起点に確かな楔を打ち込んだうえで時代の混沌へと送り出していく。《飛べないんだ僕は/羽根がないからね》という救いなき現状を《まだ何も変わらないけど/行かなきゃ ほらイエスと言え》と前へ先へと駆り立てる“イエス”しかり、《取るに足らない日々の中で 出会ったものを歌え》と鈍色の景色を雄大なアンセムへと昇華した“アニー”しかり、ロックンロールの熱狂感とは別種の推進力を描き出しているズーカラデルの、そして吉田崇展(G・Vo)というソングライターの特異性を、1stフルアルバムとなる今作は如実に映し出している。

“イエス”“花瓶のうた”など新曲5曲に加え、彼ら自身を全国区の存在へと押し上げた“アニー”をはじめ既発曲の再録/別ミックス、さらには今回初音源化となる未発表楽曲も含む全12曲。出口なく吹き溜まる感情の数々にベクトルを与えてくれる、マジカルな1枚。(高橋智樹)
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