ハリウッドの吸血鬼たちによるガレージ直送のセカンド。前作がカバー中心の、いかにもお楽しみ、余技的なものだったのに比べると、今回は全16曲中3曲以外はオリジナルと本気度が一気に上がった。
ボーカルにアリス・クーパー、ギターにエアロスミスのジョー・ペリー、そして映画と同じくらいバンド好きなジョニー・デップが集まり、15年にアルバムが出たときにはびっくりしたが、何よりも本人たちが楽しめたのだろう。それぞれがアイデアを温め、再び集まり、リミッター解除し、やりたいことをとことんやった一枚だ。その気持ちはオープナーの“アイ・ウォント・マイ・ナウ”から全面展開で、激しい前半から後半のサイケがかっていく濃密な7分ほどのトラックは、これを聴くだけで自分に合うディスクかどうかすぐにわかる。
また“ウェルカム・トゥ・ブッシュワッカーズ”ではジェフ・ベックと映画『ピンク・フラミンゴ』のジョン・ウォーターズ監督をゲストに迎えているのも楽しい遊び。そしてカバーは、ジョニー・デップがデヴィッド・ボウイの“ヒーローズ”を取り上げ、全女性ファンを持っていくのは仕方のないところだが、ジョニー・サンダースの“ユー・キャント・プット・ユア・アームズ・アラウンド・ア・メモリー”とザ・ジム・キャロル・バンドの“ピープル・フー・ダイド”と、ニューヨークが誇るジャンキーたちの名曲を取り上げてくれたのは嬉しい!
もともとハリウッド・ヴァンパイアーズは、70年代にアリス・クーパーが主宰した秘密クラブで、入会の儀式は、他のメンバー全員が酔いつぶれるまで酒を飲むことだったというが、それが好きな音楽を他のメンバーがぶっ倒れるまでやり続けることに変わっている。 (大鷹俊一)
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