「無重力の圧力」に挑む音像

ブライアン・イーノ『アポロ [2CD限定ハードカヴァー・ブック・エディション]』
発売中
ALBUM
ブライアン・イーノ アポロ [2CD限定ハードカヴァー・ブック・エディション] - 『アポロ』2CD限定ハードカバーブック展開図『アポロ』2CD限定ハードカバーブック展開図

「作品自体の発売から○年」ではなく「ドキュメンタリー映画のサントラ盤としてアルバムそのものが生まれるきっかけを作ったアポロ11号の月面着陸から半世紀」のタイミングでリリースされる、ブライアン・イーノ『アポロ』の2枚組エクステンデッド・バージョン。未知の風景やイマジネーションそのものを「演奏」しながらアンビエントという概念を押し広げ、今なお収録曲のストリーミング合計再生数3億回以上を誇る名作『アポロ』全12曲の最新リマスター音源はもちろんのこと、ブライアン・イーノ/ロジャー・イーノ/ダニエル・ラノワというオリジナル盤のラインナップによる新曲がディスク2としてコンパイルされている。

映画『宇宙へのフロンティア』のサウンドトラックをブライアン/ロジャー/ラノワがそれぞれ新曲として再構築したディスク2の収録曲は計11曲。光と影の黙示録の如き冒頭の“ジ・エンド・オブ・ア・シン・コード”しかり、宇宙空間の凍てついた暗黒を彷彿とさせる“クリア・デザート・ナイト”しかり、メジャー・コードの奥底に神秘の景色を描き切る“ライク・アイ・ワズ・ア・スペクテイター”しかり……楽器の音色やリズムのテクスチャーを明確に残しつつも、聴く者すべてを雄大な音のパースの中に抱き止める悠久のサウンドスケープを繰り広げてみせる。が、30数年の時を経て実現した3人のコラボレーションの結晶たる新曲群と“アンダー・スターズ”、“マッタ”、“ドリフト”など『アポロ』曲とを聴き比べて改めて陶酔と戦慄を禁じ得ないのは、大気圏を脱して異境に挑む「無重力の圧力」を、12音階すら融け出しそうな、複層的なアンビエンスを織り重ねて表現し切った83年当時のイーノの、圧巻のクリエイティビティと冒険精神だ。 (高橋智樹)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』8月号に掲載中です。
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ブライアン・イーノ アポロ [2CD限定ハードカヴァー・ブック・エディション] - 『rockin'on』 2019年8月号『rockin'on』 2019年8月号
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