デビュー作の20周年盤やEPのリリースが続いていたサード・アイ・ブラインドの、アルバムとしては4年ぶりの本作。長年のファンなら冒頭のシンセのイントロに面食らい、その後すぐに入ってくるヘヴィなギター・サウンドに微笑むだろう。そのタイトル・トラック“Screamer”から顕著だが、ここにはこれまでの3EBとまったく知らない3EBが混在していて、そこが面白さになっている。スレイ・ベルズのアレクシス・クラウスやシンセ・ポップ・バンドのポリサなどでプロデューサーとして活躍するライアン・オルソンが参加。また、具体的な作業としては不明だが、ミュージカル・コンシリエーレ(音楽顧問)をビリー・コーガンが務めたという。おそらく全体の方向性の精神的支柱になったのだろう。結果、随所にサウンドの実験が現れることになった。打ちこみのビートと声の変調を用いた“2X Tigers”などは明らかに近年のトラップのプロダクションを意識しており、過去のヒット曲群を単純に繰り返すのでなく、バンドにとって新しい領域を切り拓こうという気概が感じ取れる。
けれども、やはり中心にあるのはステファン・ジェンキンスそのひとの存在だ。幾分切なさを含みながらも、キャッチーで芯の通ったメロディ。もはや50代なかばになろうともいうのに、どこかイノセントを残す声。たとえば細かくデジタル処理された“Who Am I”はアコースティック・バージョンも収録されており、聴き比べることでアレンジが変わろうとも3EBの良さが損なわれないという自信を発見できる。ファーストが予想外の大ヒットとなり、そのことでかえって困難な道を歩んできた3EBだが、だからこそたどり着けた3EBだけの誇りがここにはある。 (木津毅)
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