もしかして、こちらがライフラーク?

ストーン・サワー『ハロー、ユー・バスターズ:ライヴ・イン・リノ』
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ALBUM

スリップノットのフロントマンであるコリィ・テイラーを擁するもうひとつのバンド、という説明はもはや不要だろう。正確に言えば、彼はスリップノットへの加入以前からストーン・サワーで活動していたわけだし、2017年6月に世に出た『ハイドログラッド』をもって、このバンドのオリジナル・アルバムも6枚を数えるところまできている。そして本作は、2018年の北米ツアーの際、ネバダ州のリノにて収録された、このバンドにとって初のライブ・アルバムである。

収録時期は、その最新作からの楽曲もだいぶこなれた頃にあたり、同作からの楽曲に過剰に偏ることなく、バンドの認知を広めるヒット・バラードとなった“スルー・グラス”をはじめとする重要曲が確実に網羅された、バランスの良い選曲になっている。そうした意味においては、流れの良い構成が組まれたライブ・ベストといった捉え方もできるし、初心者にとっても手に取りやすいアイテムだと言っていい。

ライブ作品といえば映像が伴うのが当たり前で、動画だって無料で楽しめるものが豊富にある今の世の中にあって、ライブ音源にまで手を出すのは、よほどのマニアか収集癖のあるリスナーということになるのかもしれない。が、これはある意味、2000年代を代表するロック・ボーカリストを擁するこのバンドの魅力を再発見させてくれる作品だといえるのではないだろうか。

音像を聴く限り、演奏や歌唱に修整が施されているのは感じられず、とにかく生々しい。CDが売れなくなると誰もがライブに活路を見出そうとするようになり、新譜制作よりも興行主体の世の中になってくると今度はそちらも飽和状態になり、本当に力のあるライブ・バンドだけが生き残っていくことになる。本作は、彼らがそうした現代を生き抜く力を十二分に持つことを実証するものだし、確実に、このバンドのライブに足を運びたいと思わせるに足るものに仕上がっている。

アメリカン・メタルの典型ともいうべき楽曲でドライブ感たっぷりに体現される“動”の部分が強力なばかりではなく、アンプラグド的なスタイルで丁寧に体現される“静”の一面とのコントラストも見事だし、80年代メタルと90年代のグランジの双方を通過してきた世代ならではの“歌ものロック”としての魅力に溢れている。実際問題として、スリップノットが動いている間は立ち止まらざるを得ないバンドではあるが、この看板の下でコリィが追い求めようとしている未来のあり方にも注目したいところだ。(増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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『rockin'on』2020年1月号