悪魔を名乗った普通の男の視線の先にあるもの

オジー・オズボーン『オーディナリー・マン』
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ALBUM
オジー・オズボーン オーディナリー・マン

新作アルバム完成の朗報が届いたと思いきや、それを追うかのように本人によるパーキンソン病告白という衝撃的ニュースが到着。喜びと悲痛さが入り混じった不思議な感覚でこの待望作の全貌に触れることのできる日を待っている読者も多いことだろう。そして、執筆者特権で本作をいち早く聴かせていただいた者として僕が今言いたいのは、これはオジーの最高傑作であると同時に、ソロ名義で創作活動するアーティストの作品としての究極形といえるものなのではないか、ということである。

昨年11月に先行シングルとして登場した⑤や①はファンの期待感を膨張させずにはおかない必殺曲だったが、それを超える衝撃をもたらしたのはポスト・マローン&トラヴィス・スコットとのコラボによる⑪、そのマローンがフィーチャーされた⑩、さらにはエルトン・ジョンとの共演による④といった、事件レベルの話題曲が用意されていた事実だ。オジーの夫人であるシャロンの父親、ドン・アーデン(故人)は音楽業界の有力者だっただけに、実は70年代からエルトンとは繋がりがあったのかもしれない。

面白いのは、クレジットを見ずに純粋に音源だけを聴いていると、そうしたニュース性の高い曲が妙に突出しているわけではなく、質の高い楽曲群に違和感なく溶け込んでいることだ。しかもそこでまず耳を引くのは、何よりもオジー自身の歌声と言葉。これまでだったら《今夜は地獄に向かおう》《生涯ずっと/俺は過去に生きてきた》《俺は最後の挨拶をした》《色褪せても俺を忘れないでくれ》《地獄への道は舗装されてはいない》《今夜だけは信心深く過ごそう》といった歌詞が、こんなにも胸に刺さることはなかっただろう。

すべては今後のインタビューなどで明かされるのだろうが、明らかにその視線は終焉を、あるいはその先までをも見据えている。とにかくすべてが意味深長であり、そんな歌と言葉に耳を奪われるあまり、誰が演奏しているのかが良い意味で気にならないほどなのだ。実はチャド・スミス、ダフ・マッケイガン、スラッシュ、さらにはトム・モレロといった錚々たる顔ぶれが名を連ねているというのに、である。

誰が演奏していようが、誰とコラボしていようが、メタル・アンセムをやろうが、スタンダードになり得そうなバラードを歌おうが、いずれもオジーそのものにしか聴こえない。そんな彼の特性についてはとうに理解していたつもりだったが、こうしてこの局面で突きつけられた本作の絶対的な説得力の強さには、もはやひれ伏すしかない。(増田勇一)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』3月号に掲載中です。
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オジー・オズボーン オーディナリー・マン - 『rockin'on』2020年3月号『rockin'on』2020年3月号
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