昨年10月、地元メルボルンにて行なわれたパフォーマンスを収録。コートニーは、家族のコレクションにあった2枚のアンプラグド・アルバム(現状、誰の作品かは不明だが、いずれ確認したい)を毎日のように聴いていたので、このアンプラグドという形式には深い思い入れを持っているという。それだけに「ただテレビ主導の企画へ招かれ、エレキをアコギに持ち替えてサラリと弾き語ってみました」的なレベルのものではなく、選曲/ゲスト/アレンジなどにこだわりが感じられる内容だ。代表曲をずらずら並べたてるような下世話な真似はせず、新曲/レア・トラック/渋いチョイスのカバーを織り交ぜ、アレンジや全体の構成まで考え抜いた様子が伝わってくる。オーストラリアではレジェンド級のミュージシャンだというポール・ケリー、彼女自身のレーベルであるミルク!レコーズの仲間イヴリン・モリス、地元メルボルンを拠点とするマーロン・ウィリアムスというゲスト3名はもちろん、レナード・コーエンの曲に並べてカバーで取り上げた、アーチー・ローチとシーカー・ラヴァー・キーパーといった豪州のアーティストは、広く海外へ紹介したいという心情も感じとれる。一方アレンジ面では、“Avant Gardener”と“ネームレス、フェイスレス”でイヴリンがプレイするピアノだけでなく、ルーシー・ワルドロンによるチェロをフィーチャーしている点も興味深い。こうしたポイントを確認し直してみると、やはり先述したアンプラグド愛聴盤のうちひとつはニルヴァーナなのではないかという気がしてくる。そして、カート・コバーンと同様に自らの音楽的な可能性を示してみせたコートニー・バーネットは、カートと違って、ますます今後の活躍を楽しみにし続けることができるのだ。 (鈴木喜之)
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