【3年ぶりの大復活! グラストンベリーDAY3レポ】ジャック・ホワイト、ロード、フォンテインズD.C.、ペット・ショップ・ボーイズ、ケイシー・マスグレイヴス、コートニー・バーネット、アミル・アンド・ザ・スニッファーズ、ターンスタイル etc.

【3年ぶりの大復活! グラストンベリーDAY3レポ】ジャック・ホワイト、ロード、フォンテインズD.C.、ペット・ショップ・ボーイズ、ケイシー・マスグレイヴス、コートニー・バーネット、アミル・アンド・ザ・スニッファーズ、ターンスタイル etc.

飲み、踊り、騒ぎ疲れた観客のチルアウト向けか、最終日前半はジャズやソウルが多め。エマ・ジーン・サックレイ、ナイトメアズ・オン・ワックス、ヌバイア・ガルシアらUK勢も良かったが、ハービー・ハンコックはダントツ。


ウェイン・ショーターの“Footprints”の軽やかなタッチから“Cantaloupe Island”のクールさまでため息もので、ポール・マッカートニーの80歳も信じがたかったとはいえ82歳のハービーもすごかった。このヴァイブスを引き継いだのが「レジェンドのスロット」に登場した女王ダイアナ・ロス。前夜のポール並みの集客でシュープリームス時代のヒット連打の前半から大受けだったが、“Upside Down”で着火したブギーファンクのナウさが素晴らしかった。

ロック勢も各所でラストスパートをかけた。弦楽カルテットを率いたフォンテインズD.C.の序盤はヒプノティックでスローバーン。5曲目“Televised Mind”で熱が上がり始め“Boys in the Better Land”でモッシュはやっとピークに達したが、中盤のほぼ独唱に近い“The Couple Across the Way”の説得力こそ圧巻だった。この「静と動のバランス」をどう見極めてくれるのか?


「ジョンピールステージ」を荒らしたのはオーストラリアのガレージパンクの竜巻=アミル・アンド・ザ・スニッファーズ。金ラメのホットパンツでザ・ランナウェイズのシェリー・カーリーを思わせるエイミー(Vo)がノンストップな爆竹のように叫び、煽り、タテノリで暴れる。お客もポップコーンのようにはぜ始めたが、スローで情熱的な“Knifey”での盛り上げを掴み全力で特攻をかけ、最後には見事お客をモノにした。


モッシュの激しさは、続いて同ステージに登場した米ボルチモア出身のターンスタイルが恐らく今グラストで随一(スラムダンスの勢いは本場アメリカのそれ)。結成から10年以上のハードコアパンクの猛者だけに当然だが、音楽的にはグランジからスラッシュメタル、メロディックなシンセ曲まで多彩で「ハードコアハイブリッド」と言うべきユニークな魅力を放つ。所狭しと駆け跳ね回るギター陣も最高だが、半裸で観客にダイブし、踊るブレンダン(Vo)はとにかく目の離せないカリスマだった。


シークレットアクトとして登場したジャック・ホワイトのカリスマワット数も相変わらずスゴかった。


大歓声の中登場したジャックはコバルトブルーに染めた髪を軽くリーゼントしエルヴィス風。ハード+ファンキィな“Taking Me Back”で炸裂するエレキにのっけから感電!――と言いつつエフェクト使いやキーボードと相まってプログレ味もあり、トータルではツェッペリンが浮かぶ(今グラストはギタリストの見せ場が多かったが、やはりこの人がキングかも)。最新作を中心にザ・ホワイト・ストライプスや諸サイドプロジェクト曲もちりばめたフェス仕様の内容だったが、やはりラスト“Seven Nation Army”でフィールドは奥まで大合唱。


イントロ(=♪ダー・ダダダ・ダダダダー)はイギリスではサッカー試合を始め色んな場面でチャントされるモダン定番になっていて(この晩のトリ:ケンドリック・ラマー出演時も歌われていた)、セットが終わってもこのリフを繰り返す観客をジャックも嬉しそうに見つめていた。

土曜のイヴ・トゥモアとミーガン・ザ・スタリオンのSMで際どいレザールックも衝撃的だったが、「後は大トリのケンドリックを待つだけ」とばかりにユルい雰囲気の「ピラミッドステージ」に登場したロードは別の意味で同じくらいインパクト大だった。


長いダークヘアを肩丈のブロンドに染め、ライラック色のボディスーツに赤の網タイツ。ステージ中央に据えられた階段は回転式で角度を様々に変え、バンドはカラシ色のお揃いのビッグスーツ姿でカチッと振付けされている。どの瞬間を撮ってもInstagram、なウェス・アンダーソン的パステル色の世界観はこれまでのイメージの180度転換だ。

ライブ映画として観る方がいいのではないか?とすら思うほどコンセプチュアルで劇場的なセットだったし、繊細なアコギやコーラスで紡ぐ前半は「じっと見守る」ノリで、観客が揺れ始めたのも6曲目の“Ribs”から。しかしロードは明るくエアリーなサウンドと澄んだ歌声の生む癒しに徹し、後半の“Royals”や“Green Light”といった代表曲で徐々に集まってきた観衆を最後には完全に自分の世界に引き込んでいた。素晴らしい復活。

同様にフェミニンな磁力を発したケイシー・マスグレイヴスは、アメリカではカントリーのスーパースターながらイギリスではまだそこまで知られていない。


「カントリー」の言葉だけで抵抗を感じるかもしれないが、バンジョーやマンドリンだけではなくジャズやソウル、スパニッシュギターも巧みに織り交ぜたフュージョン・サウンドは洗練されていて声とメロディの良さは耳を奪わずにいられない。フリートウッド・マックの“Dreams”をカバーしたのも納得!な70年代後期〜80年代のFMロック/ポップ黄金期を彷彿させるセットに、いつの間にか大観衆が引き寄せられていた。

ロードとケイシーのロマンチックなポップも良かったが、コートニー・バーネットのロマンはさすらい人のそれだ。


小道具ゼロで剥き出しのステージといいTシャツ+黒ズボンといい普段着で自然体ながら、“Rae Street”から始まったセットはアンニュイを宿す歌声ですーっと胸に刺さってくる。ニール・ヤングばりに激しい弾きっぷりもかっこ良かったとはいえ、どこかでいつも風が吹いている、この人のディラン〜ルー・リード直系な歌の味と説得力はますます精度をあげている。

ケンドリックの登場を待つメインステージ圏は若者で埋まっていたが、第二ステージのトリを飾った今年で結成41年のペット・ショップ・ボーイズには筆者と同じ中年世代が大結集。


5月から続いている「グレイテスト・ヒッツ・ツアー」を用いたセットは1曲目から“Suburbia”!

鉄板ヒットが重めな選曲は大受けで(サウンド的には今にちゃんとアップデートされてました)、80年代イギリスのエイズ禍を描き高く評価されたドラマ『It’s a Sin 哀しみの天使たち』で主役を演じたイヤーズ&イヤーズのオリーも1曲デュエットに参加した。

SFアート調の衣装を脱ぎ捨て、最後の2曲はニール=黒のロング・コート/クリス=「BOY」キャップのアイコニックな姿で“West End Girls”、オーラスは同週末にノルウェーのLBGTQクラブで起きた無差別テロで命を落とした犠牲者(この状況を受けノルウェーの「プライド」は開催中止)に捧げられた“Being Boring”。

最後のライン――「振り返ると、僕たちはいつも思っていた/頼りにできる友人は必ずいると(We were always hoping that, looking back / You could always rely on a friend)」――をしみじみ歌いつつクリスにうなずいたニールの表情に胸が詰まった。ウクライナ、環境保護、人権問題を始めいくつものメッセージが発されたグラストンベリーだったが、「共感・信頼」はそれらに取り組むためのその基盤なのだから。

(文=坂本麻里子)



DAY3のトリ、ケンドリック・ラマーのレポートは8/5(金)発売のロッキング・オン9月号に掲載します。
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