ロックバンド的なアンサンブルはぐっと減り、ジャズ、ヒップホップ的なサウンドアプローチが多い。そのうえで、トラックはキレキレに振り切っている。プログレッシブなサウンドデザインの中で、バンド界のアベンジャーズのごとく、4人それぞれの超絶なプレイヤビリティと個性が炸裂しつつ、川谷絵音が生み出す歌メロの力を思い知るアルバムだ。ちゃんMARI初のラップも、ほな・いこかの歌も、ぐぐっと魅力が引き出されている。そもそも日本人はセンチメンタルなバラードを好む傾向にあると言われているが、その嗜好と生来の川谷の切なさを宿すメロディメイカーの資質が合致しているからこそ、ゲスの極み乙女。をはじめ、川谷絵音の作る楽曲は広く響くのだ、ということを改めて実感する。
“私以外も私”は、ジャジーでメランコリックなまやかし感ににやりとさせられるし、華々しいホーンが入ったジャズファンク、“キラーボールをもう一度”は、過去に対するレクイエム感が混ざる歌詞といい、巻き舌気味の川谷のボーカリゼーションといい、セルフオマージュ曲のスルメ感もすごい。(小松香里)
切なさのメロディメイカー
ゲスの極み乙女。『ストリーミング、CD、レコード』
発売中
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