「ポップの象徴」の帰還

宇多田ヒカル『Time』
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宇多田ヒカル Time
スクリレックスとのコラボが実現した昨年の『Face My Fears』以来約1年3ヶ月ぶりとなる新曲は、ドラマ『美食探偵 明智五郎』の書き下ろし主題歌。エレピのコードワークと808風のマシンビートの音色がリードするこの“Time”のアレンジ、そしてドラマに密接に寄り添うミステリアスなリリックが織り成す空気感は、『Fantôme』『初恋』の生音重視のスピリチュアルなサウンドメイキングとも、エレクトロのカオスに《ねえ どれくらい/ねえ 笑えばいい》と内面的な高ぶりを焼き付けた“Face My Fears(Japanese Version)”とも明らかに異なる――もっと踏み込んで言えば、それこそ「都市の猥雑さも華々しさも引き受けた『ポップの象徴』としての宇多田ヒカル」の帰還を鮮明に感じさせるものだ。

『Fantôme』以降の宇多田ヒカルの作品で重要な役割を果たしてきた小袋成彬との共同プロデュースによる“Time”。「彼氏とも家族とも分かち合えない想い」の危うい揺らぎを、大胆な譜割りとメランコリックな旋律が刻一刻と頂へと高めていく。音楽の核心を知る者ゆえの、抗い難い誘引力がここにはある。(高橋智樹)

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