眠りながら飛ぶ音楽

ビビオ『スリープ・オン・ザ・ウイング』
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ALBUM
ビビオ スリープ・オン・ザ・ウイング

昨年発表の前作『リボンズ』と同じく『スリープ・オン・ザ・ウイング』はフォーク・ミュージックの影響が色濃いサウンドである。ビビオことスティーヴン・ウィルキンソンは、イギリスのミッドランドにある自宅スタジオで本作をレコーディングしたという。田舎だ。そのことを強調するように、鳥の鳴き声から始まる曲もある。

都会の夜景が鳥の形に切りとられ、昼間の田園の上を飛んでいる。印象的なアルバム・ジャケットだ。このデザインが、新作の内容をよく象徴している。タイトル曲は、眠りながら飛ぶアマツバメから発想して作られたもの。ビビオによるとその歌詞は、都会から田舎へ逃れて安らぐこと、生前に残したものや他者と共有したものによって故人の人生が続くことをテーマにしているそうだ。

アコースティック・ギターをはじめ、ストリングス、ピアノなど、彼は本作で様々な楽器を演奏しているが、多くはインストゥルメンタルでボーカル曲は少ない。そのなかで、バッハのチェロ組曲からヒントを得たバロック風の“アウポケッツ”は、新機軸となっている。

初期のビビオは、エレクトロニックな要素の多い音作りだった。だからエレクトロニカと呼ばれたわけだが、フォーク色を強めた近作はそこに分類しにくい。一方、彼は過去にシンセやギターのループで構成したアンビエント作品『ファントム・ブリックワークス』を発表しており、聴き心地への配慮という点では、今回の新作と連続する感覚もうかがえる。その意味で、都会と田舎、夜と昼、死と生の間で想像力を解放する本作は、エレクトロニカとフォークの間を歩んできたビビオの道程を映した内容になっている。夢のなかで自由に羽ばたいているようなアルバムだ。 (遠藤利明)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』7月号に掲載中です。
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ビビオ スリープ・オン・ザ・ウイング - 『rockin'on』2020年7月号『rockin'on』2020年7月号
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