前作『HOUSE』から約1年半ぶりのフルアルバム。前作から、牛丸ありさ(Vo・G)のソングライティングは、意識的にポップにするということや、意図的にキャッチーなサビを作るということをやめ、自身の描きたい風景を、飾り立てることなく楽曲に落とし込むモードへと進んでいった。今作では、そのモードがさらに洗練された形で、
yonigeのバンドサウンドとして確立されている。
後藤正文(
ASIAN KUNG-FU GENERATION)プロデュースによる1曲目“11月24日”、そして2曲目“健全な朝”が、それをよく表していて、極力削ぎ落としたシンプルなバンドアンサンブルが、むしろ感情を揺らして、yonigeが目指す世界が非常にいいバランスで形になっている。もともと、音の隙間や言葉のその奥に、自身の感情をにじませるのが牛丸の歌の魅力だが、特に“健全な朝”は、その「隙間」に宿る景色がとても豊かだ。ラストの“ピオニー”も、決してドラマチックな歌ではないのに、なぜか泣き出したくなるような気持ちになる。聴き込むほどに心に沁みる、yonigeのひとつの到達点と言えるアルバムだ。(杉浦美恵)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年7月号より