前作『散瞳/花曇』から約1年ぶりのシングル。6月に
羊文学の塩塚モエカと一緒に
七尾旅人“サーカスナイト”のカバーも出していて、そっちもどえらくいいのでぜひ聴いてほしいのだが、この“火傷に雨”も……というか、君島大空の新しい曲を聴くたびに、そこから始まって過去の曲も片っぱしから聴き直す、というのが自分の習慣になっている。「この人の音楽を聴いている時にだけ訪れる感覚」みたいなものがあって、その中にいる時間を延ばしたいから何曲も聴くことになる、というか。言葉にもメロディにもサウンドデザインにもあきらかに強い意志があるのに、それを吟味するほうに思考が進まない。真っ白になる、意識が。声の質感とか、幾重にもなっていて分離して聴けない上モノとかが、鼓膜から侵入してきて脳を覆っていくような。自分の音楽にその感覚をほしい人が多いから、あれだけサポートや曲提供を頼まれるのだろうが、やはりそれがもっとも濃く出るのは、この人自身の作品だ。当然だけど。今作も強烈。もっとどんどん曲を作ってほしい気もするが、これくらいのペースでいい気もする。(兵庫慎司)
『ROCKIN'ON JAPAN』2020年9月号より