彼女がスマイル(とO・ブルーム)を取り戻すまで

ケイティ・ペリー『スマイル』
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ALBUM
ケイティ・ペリー スマイル

新型コロナウイルスの影響で、多くのアーティストの活動予定が大混乱に陥った今年の夏期。でも、現在35歳のケイティ・ペリーにとって、この2020年の夏は、ふたつの「大切なもの」が生まれた、一生忘れられない季節になった。

ひとつ目は、文字通り、女の子の赤ちゃん。ちなみに父親は、婚約中の恋人、オーランド・ブルーム(そう、あの『パイレーツ・オブ・カリビアン』のウィル役のイケメン俳優です)だ。そして、ふたつ目は『スマイル』。8月28日にリリースされた通算5作目のアルバムである。

振り返ってみると、17年リリースだった第4作『ウィットネス』は、いろんな意味で「しんどい」アルバムだった。それまでとは違う、社会的なテーマに挑もうという意欲は十分に伝わってきたのだけど、正直言って、「100%陽性」なケイティには向いてない曲が多すぎて、全米1位は獲得したものの、批評的にもセールス的にも散々な結果に終わってしまった。

その点、本作は、彼女の十八番であるカラフルなキャンディ・ポップへの回帰をめざした、とことん「ファン思い」のアルバムである。先陣を切るオープニング曲の“ネヴァー・リアリー・オーヴァー”は、ゼッドが共同プロデュースを手がけ、昨年5月にシングルとして先行リリースされていたナンバー。ハウス風のシンセ・ビートがどこまでも気持ちいいエレクトロ・ポップで、一度は破局を迎えながら、もう一度やり直そうとするカップルのことを歌っている――要するに、まさにケイティとオーランドの恋愛史ソングなのだ(ふたりの私生活は、他の曲の歌詞でもあれこれ触れられているので、セレブ・ゴシップ好きの方はお楽しみに!)。

が、もちろん、ただラブラブなだけで終わらない。本作用の楽曲群を書き始めた18年当時、ケイティは『ウィットネス』の不評を受け、人生最悪の「鬱」に悩まされており、そのため、本作のソングライティングは、彼女にとって自己の魂を回復する作業=セラピーの役目も果たしたのだという。先行シングルに選ばれた“デイジーズ”は、マイアミを拠点とし、最近はデュア・リパマルーン5ともコラボした旬のサウンド・チーム、ザ・モンスターズ&ストレンジャーズがアシストした最強の自己肯定アンセムだし、その他、ゴスペル風の“オンリー・ラヴ”、ファンキー・ジャムな“シャンペン・プロブレムズ”など、非シングルの曲にも力作が多い。世紀の大ヒット作『ティーンエイジ・ドリーム』からちょうど10年、ちょっと遠回りはしちゃったけど、ケイティ・ペリーにまたスマイルが戻ってきた。 (内瀬戸久司)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』10月号に掲載中です。
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ケイティ・ペリー スマイル - 『rockin'on』2020年10月号『rockin'on』2020年10月号
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