3年ぶりの来日となったケイティ・ペリーの公演だが、新作『ウィットネス』の楽曲を前面に打ち出しながらも、ケイティのアーティストとしての全貌を嫌というほど味わいつくさせる、あまりにも完璧すぎる素晴らしいライブだった。
会場が暗転してバンドが登場すると、大歓声が上がる中、ビジョンにさまざまな惑星をかすめて飛行していく宇宙のイメージが映し出され、ケイティはかなり大きめのセカンド・ステージのせり上がりから登場。ゴールドの鎧のような衣裳で、『ウィットネス』リリース以来のブロンドの短髪とあいまって、かなり戦闘的なモードで“Witness”のクライマックス部分にいきなり突入する。
自分の生き様、そして人生の目撃者となってくれる人を探していると歌い上げるこの曲は、将来出会うかもしれないその人に向けられているものでもあるし、また今日、この日のケイティを目撃しにきたファン全員の向けられているものでもあり、まさにライブの幕開けにふさわしいナンバーだ。
ドラマティックにライブを始めるため、はしょったオープニングとなったが、セカンド・ステージでまずはこのライブのメイン・テーマを歌い上げてみせ、曲がりくねった花道をメイン・ステージに戻ると途端にどこまでもショーアップされた“Roulette”に雪崩れ込む。ここでダンサー群も登場し、この曲用のセットに合わせてかなり作り込んだ振り付けを披露し、エレクトロ・ポップとしてのこの曲に花を添えていく。
ケイティは振り付け的にはこのダンサー集団を従えてはいるけれども、自身が踊りを披露することはほとんどないのが素晴らしいところ。絶対に自分の歌がへたれるようなことはせず、むしろ徹底してダンサーが自分に絡んでくる精巧な振り付けを課しているわけで、歌い手とダンサーのあり方を徹底的に突き詰めたパフォーマンスになっている。そこに日頃仕事にも生活にも几帳面で真面目な女子がある男性に賭けてみようという「ルーレット(“Roulette”)」に託した思いも乗せたこの曲のコーラスも響いて、完璧にショーアップされたパフォーマンスと歌い手の女子の切なさが響き合うポップ・パフォーマンスとなっているのだ。
続く前作『プリズム』からの“Dark Horse”は原曲のヒップホップ・ビート的なサウンドをほぼミッド・テンポのバラードに作り変えたものになっていたが、舞台のバックスクリーンに真っ赤な太陽を映し出す中で大胆に舞台装置が移動。完全にステージの設定を作り変えて、自分に心を寄せる相手に対し、自分に手を出すと大嵐に巻き込まれることになると警告する歌を披露していく。
そして『ウィットネス』のリード・シングルとなった“Chained to the Rhythm”が披露されるが、アルバムの隙のない厚いポップ・ファンクとは違って、どこまでもグルーヴをうねるバンドのファンク演奏が素晴らしい。しかも、そこにビジョンのイメージ、ダンサーの振り付けなど、すべてがこの曲の他者への不理解や消費への欲望に支配されている生き方への疑問などといったメッセージを楽しく浮き上がらせる仕掛けとなっていて、非常に手の込んだこの曲のミュージック・ビデオをも凌ぐ視覚的な刺激と楽しさに気圧されるばかりだった。
実はここまでが導入部で、この後暗転するといったん“Act My Age”の音が流れ、続いて“Teenage Dream”の導入部へと続き、完全にポップなデザインに舞台装置が模様替えし、ダンサーもポップをコテコテにしたような衣裳で登場。
ケイティは白地に細い黒のチェックのスーツで登場し、ここから“Hot N Cold”、“California Gurls”、“I Kissed A Girl”と、『ティーンエイジ・ドリーム』期の強力にポップなナンバーを披露。もちろん、ファンとしてはこの流れはたまらないし、さらに観客のひとりをステージに上げてMCを繰り広げるファン・サービスも提供し、どこまでもファンを喜ばせる時間帯ともなった。
次の暗転の後にはモノトーンのどこまでも先鋭的な衣裳で登場し、“Déjà Vu”、“Tsunami”、“E.T.”などとケイティの特に官能的な表情を打ち出したセクションとなり、あなたに食べてしまわれたいと歌う“Bon Appétit”などでは逆にステージいっぱいに妖しい食虫花の装置が配されるユーモアもまた心憎かった。
さらに次のセクションではグラム・ロック風に全身を眩い衣裳に身を包み、シンガー・ソングライターとしてのケイティが打ち出され、“Wide Awake”、さらにこの日初めてライブで演奏することになるとケイティ自らが明かした“Into Me You See”を披露した。
特に“Into Me You See”の「わたしの中にあなたは発見する」というフレーズをもじって、ケイティは過去日本のカルチャーによって自分を解放できたところがあることを振り返り、だから日本が大好きだともオーディエンスに説明していた。
続いて“Power”を歌い上げた後に、ケイティはブルーのセパレートで登場し、“Part Of Me”、“Swish Swish”、“Roar”というケイティならではのハイパー・ポップでショーを締め括ることになった。その後のアンコールの登場の仕方もまた劇的だったが、とにかく、これでもかというくらいに楽しさが演出し尽くされつつ、ケイティのメッセージが織り込まれたパフォーマンスとなって素晴らしかった。
また、印象的だったのはダンサーたちの過剰ともいえる振り付けで、ダンサーとケイティの絡みは1曲ずつが独立したミュージック・ビデオを観ているようなエンターテイメントになっているのが驚異的でもあった。
以前、ケイティとテイラー・スウィフトの確執が噂された際には、テイラーが自身のツアー中にケイティにバックダンサーを引き抜かれたと主張していた経緯もあった。当のダンサーたちも、ケイティとは気心が知れているから声がかかればすぐに駆けつける、という内容の発言を行っていたという事実もある。確かにケイティと踊っている分にはやりがいは上限なしだろう、と納得させられるパフォーマンスだった。(高見展)
〈SETLIST〉
Witness
Roulette
Dark Horse
Chained to the Rhythm
Teenage Dream
Hot N Cold
California Gurls
I Kissed A Girl
Déjà Vu
Tsunami
E.T.
Bon Appétit
Wide Awake
Into Me You See
Power
Part Of Me
Swish Swish
Roar
(encore)
Firework