自宅ライブ・ストリーム音源を今年聴くべきメッセージへと超凝縮

ニール・ヤング『ザ・タイムズ』
発売中
EP
ニール・ヤング ザ・タイムズ

コロナ禍でクレイジー・ホースとのツアーが延期になったニール・ヤング。しかし、自宅での弾き語り動画を定期的に収録、「ファイアーサイド・セッション」シリーズとして自身のサイトで公開してきた。その中でニールはライブでは滅多に取り上げない楽曲を数多く披露してきたが、今回リリースするEPはその中から特に選ばれたもので、テーマはまさに今のアメリカの政治社会状況そのものだ。

軸となるのは“Lookin' for a Leader - 2020”で、これはニールの06年の『リヴィング・ウィズ・ウォー』収録曲をあらためて取り上げたもの。もともとこの曲は当時のブッシュ大統領を指導者にふさわしい器なのかと糾弾する楽曲。自作曲なので今回取り上げることでわざわざ「2020」をつけなくてもいいはずなのだが、これをあえてつけているのはもちろんトランプに向けた新たなメッセージであるという意思表示のためだ。もともとニールはトランプ陣営が“ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド”などの楽曲を無断で選挙運動会場で流していることを著作権侵害だとして訴訟も起こしているが、現大統領はその職にふさわしくないと歌うこの曲なら、トランプ陣営も使っていいよと、動画とともに明らかにしている。

というわけで、本EPはすべて、選挙とコロナ禍と人種差別問題が噴出している今のアメリカに向けて歌うべき楽曲のセレクションとなっていて、「ザ・タイムズ」、つまり、「時代」というこのタイトルはまさにそのことを指している。“Alabama”、“Southern Man”はいずれも70年代にニールが書いた曲で、アメリカ南部における人種差別を糾弾するもの。これはミネアポリス市警察官によるジョージ・フロイドの殺害事件などの警察権力による黒人市民殺害への糾弾を込めたものなのは明らかだ。かつてレーナード・スキナードに“スウィート・ホーム・アラバマ”でこの2曲に反論された後のニールの見解は、自身の2曲が拙速な内容だったというものだった。しかし、それらをそのまま今回取り上げていることから、現在のニールの真意も推し量れるし、それは自分の感じた違和感は間違っていなかったというものだ。

また、ボブ・ディランの“The Times They Are A-Changin'”をカバーしていることも目を引く。この曲は歌い手が、時代は変わるのだからあんたも変わらなきゃと諭すもので、現在の世界的な状況を考えると、あまりにも全方位的に響くメッセージとなっている。こうしたメッセージを凝縮した7曲入りEPに仕上げるところがやはりすごいとしか言いようがない。 (高見展)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』11月号に掲載中です。
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ニール・ヤング ザ・タイムズ - 『rockin'on』2020年11月号『rockin'on』2020年11月号
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