代表曲“ホテル・カリフォルニア”の曲作りの中心だったドン・フェルダーは、2000年にバンドから解雇された。ドン・ヘンリーとともにバンドを統率してきたグレン・フライは、2016年に亡くなった。それでもイーグルスは、グレンの息子ディーコン・フライ、カントリー・ロックのベテランであるヴィンス・ギルを参加させ、存続した。『ライヴ・フロム・ザ・フォーラム 2018』は、新体制初のライブ作品だ。
イーグルスでは、各人が順繰りにリード・ボーカルを担当する。グレンが歌っていた曲を今はディーコンとヴィンス・ギルで分けあっている。過去にもメンバー交代はあったし様々な歌声が登場したが、サビのコーラスを聴けば、ああイーグルスだと感じるものになっていた。新体制でもそれは変わらない。
もちろん、バンドのヒット曲の数々が披露される。加えてこのツアーの選曲には特徴があった。メンバーそれぞれが、ソロや以前いたバンドで発表した曲を歌っている。また、オープニングがスティーヴ・ヤングの“セヴン・ブリッジズ・ロード”であるのをはじめ、J.D.サウザー、トム・ウェイツの曲をとりあげている。イーグルスのレパートリーのなかでも、カバーが多めになっているのだ。
メンバー5人中70年代黄金期に在籍したのは、ドン・ヘンリー、ジョー・ウォルシュ、ティモシー・B・シュミットの3人で割合は減ってしまった。そして、彼らは過去のイーグルスの再現だけにこだわるより、もっと広くアメリカン・ロックというものを聴かせる方向を選んだ。アコギ、スライド・ギター、ハーモニー。カントリー、フォーク、ブルース、ハード・ロック。爽やかさと土臭さ。ここには、アメリカン・ロックの美点が集められている。 (遠藤利明)
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