「SKY-HIのベスト盤」と「SKY-HIこそ至高」のダブルミーニングとなった本作は「POPS BEST」、「RAP BEST」、「COLLABORATION BEST」の3枚で構成され、再録曲も多く含む充実作だ。SKY-HIとAAA日高光啓の活動についてはそれぞれ別物として語るべきなのだろうが、AAAが活動休止を発表して15周年ベスト盤をリリースした同年に、SKY-HIもベスト盤を発表した事実には大きな節目を感じる。ポップ最前線の担い手であることと並行してソロのラッパーたる活動を本格化させた彼のキャリアは、ラップとメロディ歌唱の垣根が崩れ、新しいボーカルスタイルが世界のシーンを席巻した時代とも付合していた。飽くなき探求と研鑽を重ね、先鋭的なトラックの数々を生み出し、SKY-HIは新しい時代を牽引するアーティストになったのだ。このベスト盤はひとつの時代を象徴する重要な記録として、後世まで残されるはずだ。「POPS BEST」の後半、“クロノグラフ”～“そこにいた”～“Marble”の流れがあまりに美しく、「RAP BEST」ラストの“Sky’s The Limit”は可能性の上限を吹き飛ばす。（小池宏和）

『ROCKIN'ON JAPAN』2020年11月号より