ファン投票を反映したベスト盤。瑞々しい歌声のハーモニー、心地好いコードの響き、幻想的な色合いのシンセサウンドが絶妙に融合していて、圧倒的にキャッチーなのに、いつもどこか寂しげなのが
Czecho No Republicの音楽だと再認識させられる。元気いっぱいに踊っているうちに切なさで胸がいっぱいになる“Amazing Parade”、彼らを突き動かすものをまっすぐに描いた“好奇心”、《落ち込むより はしゃいでいたい》と歌う声が少なからず翳を帯びている“Oh Yeah!!!!!!!”、花火の美しさと不可分の儚さが滲む “Firework”など、あらゆる曲が胸に深く沁みる。幸福な祝祭はいつか呆気なく終わってしまうことを常に感じながらも、「楽しさ」を決して諦めず、新しい音を紡ぎ出し続けてきたのがこのバンドの10年間の軌跡であり、これからも変わらない部分なのだろう……そんなことを感じさせてくれる曲たちは、非情な現実に踏みつぶされても希望の灯をどうにか明日へと繋いで生きる日々と穏やかにシンクロする。素敵な同志を得たかのようなこの感覚は、音楽を聴くうえでのかけがえのない喜びだ。(田中大)
『ROCKIN'ON JAPAN』2021年1月号より