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オウテカ『プラス』
発売中
ALBUM
オウテカ プラス

『SIGN』の興奮冷めやらぬうちに配信では12日後にドロップされたフル・アルバム。同時期に制作されたトラックの中から作風が『SIGN』にそぐわなかったものをまとめた内容で、いわゆる「アウトテイク集」と解釈することもできる。しかしその先入観は抜きにして単体として成り立つクオリティであり、聴きごたえ充分なのは見事だ。

ジャケットからして一種の兄弟作であり、サウンドのパレットそのものは大きく変化していない。しかし平均6分前後の比較的コンパクトな楽曲を通じ、オウテカが30年近くにわたり踏み込んできたエレクトロニック・ミュージックの様々な側面を1曲ごとに提示した『SIGN』がそのぶん変化とドラマに富みアクセスしやすかったのに対し、本作はより実験的かつ抽象度の高い楽曲が並ぶ。ねじれ伸縮するビートが畳み掛け脳内をぽこぽこバウンスする冒頭の①②からして「少しひねくれたヘンな弟」という印象だが、嬉しいのは④⑥⑨といった10分以上のジャムの存在。こちらの集中力を途切れさせることなく聴かせきる彼らの超一級な構成力と鬼気迫る緻密なビート・メイクとを改めて堪能できる。③⑤⑦⑧のようにはっとするほどシュールな美に耳が吸い込まれてしまう場面も随所にあり、翻弄され感嘆させられるという意味ではオウテカらしさは強いかも。

『LP5』以降、(良い意味での)難解さと変態さが偏愛される傾向があった。だが『NTS Sessions 4』の“All End”のような圧巻曲に惹き付けられ戻ってきた90年代のファンは彼らの魅力を凝縮し最新モードに更新した『SIGN』に感涙したはずだし、本作はその先も聴かせる。新たなディケイドの門出にふさわしい声明にして、これからオウテカに入る聴き手にもジャストなダブル・リリース。(坂本麻里子)



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ディスク・レビューは現在発売中の『ロッキング・オン』1月号に掲載中です。
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オウテカ プラス - 『rockin'on』2021年1月号『rockin'on』2021年1月号
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