デビュー作『アイ・シュド・ココ』の25周年を記念し、2020年初頭に開始されたツアーの模様を収めたライブ・アルバム。1年前はまだ、このように観衆の大歓声が上がるライブが行われていたのだ。本作には彼らの4thアルバム『ライフ・オン・アザー・プラネッツ』をもじったタイトルが付けられているが、まさしく今では別の惑星での出来事のように思えてしまう。ともあれ、本作。録音が非常に良く各楽器の鳴りをビビッドに捉えていることもあるが、何よりアンサンブルが抜群に優れている。
かつてスーパーグラスは、結果として幻に終わった7thアルバム制作中にメンバー間の意見の相違が顕在化し、2010年解散。期せずして最終作となった『ダイアモンド・フー・ハ』がアルバムの内容もセールスもそれまでと比べると些か満足いく結果とはならなかったことも重なり、尻すぼみの幕引きであった印象は否めないし、何よりその後のギャズ・クームスのソロ・ワークが滅法充実していたことから、このリユニオンに対し若干懐疑的な部分もあった。しかし、本作を聴いているうちに、くっきりと思い出した。毎度異なるトライアルに挑みながら、楽曲やアレンジがいかに変化しても記名性を失わないその強固なグルーヴを軸に、ハイクオリティな作品をリリースし続けたこのバンドのキャリア、その得難さを。本作においても曲毎にグラム、パンク、サイケ、ハード・ロック、フォーク・ロックなど、ロック闇鍋のような多彩さで展開していくのだが、絶妙な並びと芯の通った演奏によって見事に緩急に富んだ独自性の高いセットを生んでいる。バンドは2021年の夏にも英国~欧州をまわるツアーを予定しており、どうやら継続的に活動してくれるようである。となれば、いつかは日本でもと、祈らずにいられない。(長瀬昇)
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