最強のテーマをも染め上げる

あいみょん『桜が降る夜は』
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あいみょん 桜が降る夜は
いわゆる桜ソングであり、ストリングスも響いてくるミドルチューンなのだけれど、儚さや切なさばかりが押し寄せてくる楽曲にはなっていないところが、あいみょんらしさなのだと思う。フラットなバンドサウンドとカラッとした歌声が、心地よい温度感に中和しているのだ。

さらに、《この体ごと貴方に恋してる/それだけは分かるのです》という健気なことを歌っているから、恋愛にどっぷりと浸かっている人に刺さることは間違いないのだけれど、それだけではない。鮮やかな情景が見えたり、はじまりの季節を思い出したりするし、幅広い人に届く可能性を感じる。特に《新しい色に染まるのは/桜だけでいい》《心から思うこと/今伝えるべきなのか/考えている間に春は終わる》と、桜や春に気持ちを重ね合わせた表現は、日本に生きる老若男女なら、深く頷けるものがあると思う。

スタンダード且つ最強のテーマの中で、素材が光る味付けの曲調と、文学性と大衆性を誇る歌詞という、彼女の本来的な力が際立っている。これで、彼女は桜ソングをもあいみょん色に攻略してしまうことが証明された。(高橋美穂)

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