走馬灯のような、餞のような

宇多田ヒカル『One Last Kiss』
発売中
EP
宇多田ヒカル One Last Kiss
時空を超えるような曲だ。“One Last Kiss”を最初に聴いた時の印象はそんな感じだった。どこか昔の宇多田ヒカルを彷彿とさせるようなシンセのフレーズとリズミカルなボーカルが、曲の後半に向かうにつれてどんどん変化していく。この楽曲に参加したA.G.クック(チャーリーXCXの共同作業者でもある)らしいサウンドデザインを描き出しながら、メロディと歌はまるで異なる世界線を重ね合わせるようにしてどんどん拡散し、抽象度を高めていき、讃美歌のような神秘的な響きとともにプッツリと終わる。主題歌となっている映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』のエンディングではこのあとに“Beautiful World (Da Capo Version)”がつながるのだが、それはこのEPでも同様だ。そこでまた歴史がループしたような奇妙な感覚に陥る。

これは喪失の歌、というかあらかじめプログラミングされた《喪失の予感》を感じながらそれに抗う歌だ。それはいうまでもなく『エヴァ』の物語だが、思えば宇多田ヒカルはずっとそれを歌ってきたし、この曲はそんな彼女の歴史を総括しているようにも聴こえる。(小川智宏)

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